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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
肥料も色々あるよね編
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米粉のパン

 ピザ屋の厨房は今も忙しいので、調理台の一角だけを使う事にするサビーナだ。今回はレカが居ないのだが、代わりに協会長が二人とアバヤ医師が加わっているので人数が多い。

 サビーナが新しい薄い手袋に交換して、彼らに指示した。

「厨房はまだまだ忙しいんだから、邪魔にならないようにこっちへ寄りなさい。こら、そこのヤブ医者。フライパンに触らない!」

 スマホで撮影を始めたゴパルにも容赦なく指示を飛ばしてきた。

「そこのゴパル山羊君も、もっとこっちへ寄りなさい。そこに立ってると、シェフの邪魔になるでしょ!」

(いやいやいや……そもそも、こんな忙しい厨房で撮影する事が、シェフ達の邪魔になってると思いますが。パン工房とかでやれば良いのに)

 心ではそう思うのだが、ここは素直に指示に従うゴパルであった。


 ゴパルの撮影位置が修正されたので、早速始めるサビーナだ。

「それじゃあ、米粉のパンを紹介するわね。家庭でもできるように簡単なレシピにしたから、これを参考にして色々と試してみて」


 カボチャを調理台の上に置いてククリ刀で叩き切った。それを三日月型に切り分ける。皮をそぎ落として種を取り除き、黄色い果肉だけにする。

「カボチャにしたのは、焼くと色が付きやすいから。カボチャが無い時期はジャガイモでも良いわよ。さて、こいつをすりおろすわね」

 カボチャの切り身をすりおろして鍋に入れ、そこに同量の水を加えた。コンロの火をつけて煮立たせていく。 

「生のカボチャは消化に悪いからね。火を通して柔らかくするの。ん、こんなものかな」

 今回は食パンにするという事で、一斤分の分量という話だった。煮崩したカボチャを黄色い玉状にして、重さを量る。六十グラムに調整した。


「次に砂糖が入っていないポン菓子を、ミキサーで砕いて粉状にするわね」

 ネパールでは米をポン菓子状にした食材がある。ご飯や干飯チューラの代わりにして食べる事が多い。

 ゴパルが撮影を続けながら頬を緩めた。

「あ、ソレって美味しいですよね。サクサクしてて、鶏肉の香辛料煮込みなんかと一緒に食べると良い感じです」

 家でパーティをする場合、参加する人数が多い場合にはご飯を炊いても足らなくなる。そんな時に、このポン菓子を使ったりする。


 ポン菓子を砕いた粉は、少量の水を使って団子にした。これも重さを量り十五グラムにする。サビーナがボウルを調理台の上に置いて、この団子とカボチャの玉を入れる。さらに米粉を三百グラムに砂糖八グラム、塩を四グラムを加えてよく混ぜた。

「これに天然酵母の液を四十CC足すわね。これをよく混ぜながら、人肌に温めた温水を少しずつ加えていく事。温水の量は最大で二百CCくらいかな。ローティの生地よりも柔らかいくらいにして、表面がテカテカしてくるのが目安ね」

 サビーナに手招きされて、ゴパルがボウルの中の状態を撮影する。見た目はまさにパン生地だ。カボチャを使っているので、かなり黄色っぽいが。


 撮影をした後で、サビーナがボウルのパン生地を一斤用の食パンの型枠に流し込んだ。トントンと型枠を調理台の上に落として、余計な空隙を埋めていく。パン生地は型枠の半分程度の量だった。

「これを三十度から三十五度にして一晩発酵。湯たんぽの上に型枠を置いて、タオルで巻いて保温すれば首都でも大丈夫でしょ。生地が倍に膨らむまで待って発酵完了」

 ここでサビーナがペロと舌を出した。

「発酵済みのパン生地は用意してないのよ。ごめん。説明はここまで」

 ゴパルが口元を緩めた。

「ですよね。急きょ米粉パンを作る事になりましたからね。で、何度くらいで焼けば良いのですか? サビーナさん」


 サビーナがパン生地を厨房スタッフに渡してゴパルに振り返った。

「そうね……体積が大きいものね。まず型枠にフタをして、オーブンで百六十度で十分間焼いて、次に二百度で二十分間くらい蒸し焼き。フタを外して、二百度で二十分間焼いて焼き色を付けるのが確実かな」

 ゴパルが何か言いたそうな表情をしているので、機先を制してサビーナが付け加えた。

「オーブンが無い家はコンロに魚焼きの網を乗せて、その上に型枠を置いて弱火で焼けば良いわよ。型枠を転がして、側面にも火を通す事。最後に型枠をひっくり返して上面をあぶって焼けば完成ね」


 アバヤ医師が困ったような表情を浮かべた。

「簡単ではないぞ。小麦アレルギーの人にとっては大事な事だ。もっと簡略化できないものかね」

 サビーナが腕組みをして小さくため息をついた。

「これでもかなり簡単にしてるんだけど。これ以上簡単にするなら、食品添加物を使うしかないわね」


 グルタチオンという食品添加物を使う方法をサビーナが話してくれた。この場合は米粉だけを使えば良く、ジャガイモやカボチャ、それにポン菓子は不要になる。

「塩も不要ね。砂糖と天然酵母だけ加えれば膨らむわよ。まだ実験している最中だけど、米粉二百八十グラムにコレを七百五十ミリグラム添加すれば良い感じかな」


 ラビン協会長が興味深く聞いていたが、静かにうなずいた。

「実験してくれてありがとうございます、サビーナさん。では、当面はカボチャとポン菓子を使う方法で考えましょうか。ポカラ工業大学には私が、米粉つくりの加工機械の試作をお願いしておきます」

 ゴパルも撮影を終えて、スマホをポケットに突っ込んだ。

「私は育種学研究室のゴビンダ教授に、小麦の品種改良の様子を聞いてみますね。それとうちのクシュ教授にも、パン用酵母の研究の進み具合を聞いてみます」

 サビーナが素直にうなずいた。

「分かったわラビン協会長さん。ゴパル君もよろしく頼むわね」

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