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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
肥料も色々あるよね編
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二十四時間営業のピザ屋

 ピザ屋に入ると、奥の会員席で協会長がアバヤ医師と談笑しているのが見えた。

 ピザ屋は相変わらず学生と観光客とで混雑していて騒々しい。そのため、ゴパルとカルパナが会員席まで歩いていかないと気づいてもらえなかったようだ。

 ゴパルとカルパナが合掌して協会長に挨拶をしてから、やっと気がついて慌てて合掌して挨拶を返した。

「ゴパル先生、カルパナさんこんにちは。石窯で焼くピザが人気になったようで、こうして繁盛しています」

 協会長が学生だらけのピザ屋店内を嬉しそうに見つめた。

「特に学生の食いつきが良いですね。ピザとパスタを食べながら、規定の三時間ぎりぎりまで店に居座るスタイルが定着してきたようです。店内の混雑状況や、品ぞろえ具合を配信している事も好評ですね」


 アバヤ医師が早くも白ワインを飲みながら、揚げピーナツをボリボリ食べている。

「おかげで酷い混雑は無くなったが、常時混雑している有様だがね」

 揚げピーナツを口に放り込んだ。

「しかしまあ、万引きやケンカなんかの騒動も少なくなったし、良い感じだな」

 さらに揚げピーナツを口に投げ込む。

「ワシとしては乱闘する連中を眺めてワインを飲む楽しみが減ったから、多少つまらなくなったが」

 もう一度揚げピーナツを口の中に入れてから、白ワインをぐいっと飲んだ。

「一方で女学生どもが増えたから目の保養になってるかな。カンニャ大学前のカフェほど洗練されておらん連中だが、カボチャはカボチャなりに楽しめる」


 カルパナがジト目になって注意した。

「アバヤ先生、そういう所ですよ。お医者様なのですから言動には気をつけてください。息子さんが往診の時に色々言われて困ってるって聞きますよ」

 アバヤ医師の息子は医者になっていて、今は町医者の院長だ。内科医で人柄も穏やかな紳士として知られている。

 指摘されたアバヤ医師が、ニヤニヤ笑顔で揚げピーナツをボリボリ食べながら答えた。こちらは、絵に描いたようなヤブ医者の雰囲気だ。

「出来が良すぎる息子を持つとな、足を引っ張りたくなるのが人情ではないかね? 聖人過ぎると人間らしさに欠けて、患者が近寄り難くなるものだよ」

 さらに揚げピーナツを口の中へ投げ込むアバヤ医師だ。

「まあ、病院が潰れるような下手な事はしないから安心しなさい」


 この医者は……と困った表情で視線を交わすカルパナとゴパルであった。

 ちょうどサビーナも厨房から出てきて話を聞いていたようだ。彼女もジト目になって腕組みをしながらアバヤ医師の前に仁王立ちになった。

「本当に、出禁ラインすれすれをヒラヒラ泳ぐのが好きよね、このヤブ医者」

 残念そうにため息をついてから、気持ちを切り替えて協会長を見た。

「今日はラビン協会長さんと、隣にサマリ協会長さんも来てるのね。石窯を見に来たの?」


 協会長が穏やかに微笑んだ。

「一つはその通りですね。石窯が評判になっているそうで、おめでとうございます、サビーナさん」

 次にゴパルに視線を向けて、隣の初老の紳士を紹介した。

「彼はサマリ・ヒラチャンです。ジョムソンのホテル協会長をしていますよ」

 紹介された初老の紳士が、ゴパルに合掌して挨拶をした。協会長と同じくらいに丁寧な所作だ。

「初めまして、ゴパル先生。KLや低温蔵の事を色々と聞いていますよ」


 サマリ協会長にゴパルも合掌して挨拶を返した。彼の身長はポカラのラビン協会長よりも五センチほど低い百六十センチほどだ。ヒラチャン姓なのでラビン協会長と同じくタカリ族なのだろう。

 落ち着いた雰囲気のスーツが似合う初老の紳士だ。顔つきも一重まぶたの黒い瞳で、若干つり目気味だろうか。髪はかなり短く刈り揃えられていて、白髪が結構交じっている。前髪だけは少しだけ伸ばしているが。


 ゴパルが自己紹介をしてから彼に聞いてみた。

「ジョムソンはアンナプルナ連峰の北側ですよね。ポカラまで来るのは大変ではありませんか? そういえば、飛行便があるのでしたっけ」

 サマリ協会長が穏やかに微笑んだ。

「飛行機ですと三十分ほどかかりますね。車ですと十時間はかかります。舗装道路ではありませんので、結構疲れますよ」


 ちなみにポカラから首都までも飛行機で三十分ほどだ。車では道路が空いていれば四時間の運転になる。バスでは六時間ほどか。


 ゴパルがポカラとジョムソンを往復する小型四駆便の運行表を思い出して、両目を閉じて軽く呻いた。

「そうですか……天気が荒れている時期は飛行機が飛ばなくなるので、陸路って大変そうですね」

 なるべくジョムソンでの仕事が来ないように、内心で祈るゴパルであった。

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