表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
氷河には氷があるよね編
67/1133

チヤ休憩

 そんな絶壁の道の途中に、何と一軒の茶店があった。非常に簡素な造りで、森から切ってきたネパールハンノキを数本、枝を切り落として柱にし、横木を渡して補強してから、上に穴が開いた中古のトタン屋根を被せている。いうまでもなく、掘っ建て小屋だ。

 それでも、きちんとした薪かまどで、ヤカンを火にかけている。普通は、灯油コンロを使うものだが。かまどの奥には薪の山があり、衣服が干されていた。

 当然のように立ち寄るゴパルである。

「やあ、よく降る雨ですね。チヤを一杯もらえますか」


挿絵(By みてみん)


 オヤジと呼ぶには、かなり歳をとった男が、ニコニコしながら返事をする。彼はグルン族の顔立ちでは無いのだが、同じモンゴロイド系の顔だ。恐らくはプン族だろう。

「へい。ちょいと待ってくれ、旦那」

 ヤカンから、ガラスコップにチヤを注いで出してきた。こんな屋台なのに、きちんとした水牛の乳を使っている。内心驚くゴパルだ。ヤカンは、長年使いこんだせいで真っ黒。

 その歴史の臭いが、チヤに混じっている。ゴパルは、この臭いが嫌いではなさそうである。垂れ目を細めて、オヤジに聞いた。

「これからガンドルンへ向かいます。民宿ローディって知っていますか?」


 オヤジが、しわが目立つ顔をほころばせて、前歯が数本抜けた歯を見せた。

「おう。良い宿を選んだね、旦那。グルン族が経営する民宿は、ろくでもない所が多いんだが、あの民宿は良いな。ワシも時々、飯を食いに行くよ」

 なるほど、と素直に聞くゴパルである。確かプン族は、ゴレパニ周辺を本拠地としている少数民族だったかな、と思い起こす。

 それから、オヤジと少しの間、雑談を交わす。ここは、シャウリバザールという、ちゃんとした地名があるという事だった。バザールにしては、他には、屋台や店が見当たらないが。

「車道が通る前は、ちょっと離れた場所にあったんだよ。ちょいと移動してきた。こう見えて、なかなか繁盛しているんだぜ」

 ネパール人の言う『ちょっと』の範囲は、相当なものなので、普通に聞き流すゴパルであった。チヤ休憩を終えたので、代金を手渡す。

「ごちそうさま。さて、ガンドルンへ入るかな」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ