表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
肥料も色々あるよね編
662/1133

濃厚飼料とサイレージ

 クリシュナ社長が、ゴパルの後ろから上ってきているカルパナに聞いた。

「カルパナさん。濃厚飼料の材料ですが、飼料用コーンとか飼料米や汎用小麦とか、そちらで栽培する事は難しいですかね? インドや中国から輸入しているので、土砂崩れなんかで道が塞がると不足してしまうんですよ」

 カルパナが軽く腕組みをして考え込んだ。ゴパルやクリシュナ社長と違って、全く息が乱れていない。

「……今の状況では難しいと思います。やっと小麦栽培の試験が始まった所ですので、大量の注文には応じられないですね。すいません、クリシュナ社長さん」


 カルパナからの返事は前もって予想していたようで、それほど残念そうにしていないクリシュナ社長とラジェシュであった。ちなみにレカはここに居らず、事務所の中でチヤを飲んでいる。

「いえいえ、無理な注文というのは分かっていますから気にしないでください、カルパナさん。そうしたら、やはりブトワルに牧草と飼料用穀物の生産拠点を設ける計画を進めるか。ラジェシュ、よろしく頼むよ」

 クリシュナ社長から話を振られたラジェシュが、少し淡々とした口調で答えた。あまりやる気になっていないようだ。

「分かったよ。ブトワルからポカラまでだったら、道路が崩れてもロバ隊で何とかできるからね。カルナちゃんが踏破してるから確実だ」


 そして、ゴパルとカルパナに簡単に説明を始めた。

 濃厚飼料の作物として考えているのは、飼料用の米、小麦、トウモロコシらしい。人が食べてもあまり美味くないのだが、とにかく収穫量が多い。

 肥料としてはリテパニ酪農で作った液肥や厩肥きゅうひを当て、さらにブトワルの町のレストランから回収する生ゴミをボカシにして使う予定だそうだ。


 ラジェシュが坂を上りながら軽く肩をすくめた。

「まあ、それでも足りないと思うので、化学肥料を併用する事になると思います」

 一方、ポカラの北にあるツクチェにはリンゴを原料としたジュースや蒸留酒、醸造酒を製造している酒造所がある。そこで生じたリンゴの搾りカスも安く一括購入するという話だった。同様に、ブトワル産のバナナやカボチャも大口契約で一括購入するらしい。


 粗飼料である牧草やサイレージも、インドや中国からの輸入に頼っていると話すラジェシュだ。なので、ブトワルで牧草栽培を現地農家にやってもらう計画という事だった。ラジェシュが話を続ける。

「目ぼしい村が見つかりましたので、そこの代表と交渉中なんですよ」

 牧草は主にイネ科にすると言って、ラジェシュがゴパルに聞いた。

「牧草はそのままですと枯れてダメになります。そこで乳酸発酵させてサイレージとして長期保存するんですが、この際に酸度が一定にならないんですよ。KLでこの酸度を均一化できますか?」


 牧草は収穫後すぐにフレコン袋に詰めて密閉する。しかし、袋詰めしただけでは荷運びに不便なので、さらに圧縮してロールベールと呼ばれる形状に押し固める。

 このロールベールの中では空気が乏しいので嫌気状態になり、乳酸発酵に適した環境になる。発酵が落ち着けばサイレージとして使える。

 この乳酸発酵は、空気中を漂っていたり牧草に付着していたりした野生の乳酸菌による発酵だ。そのため、ロールベールの中で発酵にムラが生じる。そんなサイレージを牛に与えても、あまり食べてくれないのが問題点だ。


 ゴパルが素直にうなずいた。ちょっと息切れしているが。

「均一化できると思いますよ。収穫したばかりの牧草にKL培養液と、糖蜜、砂糖の希釈液を散布すれば大丈夫でしょう」

 ゴパルが少し考えてから、次のように追加提案をした。

 米ぬか嫌気ボカシを作る要領で仕込んで、水分調整すれば均一に発酵するはずだと告げた。

「揚げ物の衣みたいに米ぬかを少量だけ振っておけば、それが水分保持をしてくれるはずです。草だけですと、どうしても底の方に液体が溜まってしまいますからね」


 ラジェシュがクリシュナ社長と視線を交わして、ゴパルに振り返った。

「分かりました。やってみましょう。ロールベールって一つ五百キロもありますからね。KL培養液や糖蜜に砂糖もそれなりに多く使う事になりそうです。それと、米ぬかもですね」

 ゴパルが目を点にした。

「そんなに重いのですか?」

 クリシュナ社長がニンマリと笑った。

「ギッチギチに詰め込んで押し固めますからね。そのくらい重くしないと、盗難に遭いやすいんですよ。牧草って売れますから」


 彼の話によると、さらにロールベールを二段重ねにして積み上げるそうだ。

 この包みには、宇宙エレベータ開発で商品化された素材を使っているらしい。普通の布だと野ネズミや野鳥等に食い破られてしまうという説明だった。

「宇宙エレベータに感謝ですね。モルディブの島で作ってるそうですが、こんなインドの山奥にも恩恵が届いていますよ」

 ゴパルとカルパナも宇宙エレベータの建設現場には行った事がなかった。というか、まだ建設も始まっていない。

 今は地球を回る静止衛星軌道上に、大きな宇宙ステーションが完成した段階だそうだ。この宇宙ステーションから、クモの糸のような細い案内ケーブルをモルディブの島に向けて垂らしていく計画である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ