排水処理の現場で
その後は、排水処理システムと、牛糞の厩肥つくりの現場を見る事にしたゴパル達であった。
さらに排水をKLで発酵させて臭いを抑えて、液肥をつくる現場も見る予定だ。今回は忘れずに、光合成細菌製造のハウスも確認する事にした。
棚田を利用したハイブリッド伏流式人工湿地ろ過システムでは、明らかに悪臭やハエが減っていた。季節なのか今はたくさんのトンボが飛び回っている。
軽石と発泡コンクリートが敷き詰められた棚田では、ヨシがすくすくと育っていた。前回ゴパルが飛び込んだ場所も、今はヨシで覆われている。
さすがに乾期に入ったので、足元も泥ではなくなっていた。そのため、今回は下の棚田へも行ってみるゴパルだ。上から三段目の棚田から最終の四段目へ流れている処理水を見て、少し考えている。三段目の棚田は発泡コンクリートを表面に敷き詰めていないので、白い軽石だけだ。
さらにここでは排水中の有機汚染物質を嫌気分解させるので、パイプも差し込まれていない。ヨシだけが生えているので、何かの公園のようにも見える。
ここまでくると、悪臭やハエもほとんどなくなっていた。
ゴパルがクリシュナ社長に、三段目から四段目へ続く排水路を指さした。
「この間に、ちょっとした貯水槽を設けてみてはどうでしょうか。炭酸カルシウム粒を詰めて、排水中に含まれているリン酸を吸着させます。吸着後は、リン酸カルシウム肥料として使う事ができるはずですよ」
リン酸肥料と聞いて、ピクリと反応するカルパナだ。しかし、化学肥料の分類になりそうなので、残念そうに肩をすくめた。一方のクリシュナ社長は興味が沸いたようである。
「なるほど。リン酸カルシウム肥料ですか。成分分析してからの判断になりますが、面白そうですね。やってみますよ」
ネパールは化学肥料をインドや中国から輸入している。窒素肥料は比較的に多く輸入できているのだが、リン酸肥料はそうでもない。一般に、作物栽培では窒素、リン酸、カリウムの三大要素を含む肥料が必要とされる。
四段目の棚田を通過した排水は、すっかり浄化されていて色も臭いもきれいになっていた。そのまま河岸段丘の底を流れている白ガンダキ川に放流されている。
その排水口のそばには、魚を獲る網がいくつも設けられていた。網の周囲には、たくさんの小魚が群れをなして泳いでいるのが見える。この辺りの水系ではコイやナマズの仲間だろう。
ゴパルが漁網を感心して眺めた。
「早速、漁民が仕掛けを作っていますね。売れるほど魚が獲れるのかな」
カルパナが穏やかに微笑んだ。
「これだけの漁網ですから売れるのでしょうね。ここを仕事の土地にしているのは、ポデでしょうか」
あいにく今は漁民の姿が見当たらなかったので、漁獲量についての情報は得られなかった。下ってきた道をそのまま上って戻る事にするゴパル達だ。
ゴパルがクリシュナ社長に笑顔で感謝をした。
「やっと全部のシステムを見る事ができました。ありがとうございます。排水処理が順調そうで良かったですね」
クリシュナ社長も口元を緩めて答えた。
「雨期に備えて、今から石の階段にしておきますね。そうすれば、もう滑る事もないでしょう」




