ガンドルンへ
ディワシュ運転手とは、バスパークで別れて、ガンドルンへ向かう事にするゴパルであった。
立派なロバ道があり、それを辿って坂道を上っていく。
「ふむ。小型四駆車やバイクであれば、通行できそうだな」
しかし、沢を一つ越えて、急峻な斜面を歩く頃になると、その考えを改めた。
ガッサリと抉られたような、断崖絶壁が現れたためだ。絶壁の高さは百メートルほどもあり、その下には立派な段々畑が、谷底のモディ川まで続いている。
そんな絶壁の中腹を強引に削って、人やロバ隊が通行できるギリギリの幅の山道が、一本だけ作られていた。
路肩は所々崩れていて、百メートルほど下の段々畑の上段に、土塊や岩塊が落ちている。道幅も所によっては二メートル未満になって狭まっている。これでは、バイク以外の車は通行できないだろう。
絶壁を切り開いた道には、大勢の外国人観光客や、地元住民、それにロバ隊が行き来している。
濁流となって見える、はるか下方のモディ川から、上昇気流が起きていた。風が段々畑を経由して絶壁を吹き上がってくる。
眼下の谷で雲が発生して、上昇気流に乗って吹き上がってきた。あっという間に、ゴパルが歩いている道を吹き抜ける。そのまま、雨雲に覆われた上空へ吸収されていった。
その雲を見送った先に、尾根筋が見える。そこに鉄筋コンクリートの柱を使った建物が見えた。小さな沢を越えた向こう側なので、もう少し時間がかかりそうだ。
「民宿か。どうやらガンドルンは、あの尾根の向こう側にありそうだな」




