イチジク園に寄り道
スルヤ教授とディーパク助手との話が終わった。バイクの二人乗りでポカラへ帰る事にするカルパナとゴパルだ。
カルパナがヘルメットをゴパルに渡してから提案した。
「ゴパル先生。せっかくここまで来ていますので、ベグナス湖まで行きましょうか。そこで養殖をしているんですよ。あっ、そういえばレカナート市の養豚団地や、ポカラの東にある養鶏企業にもまだ行った事がありませんね」
戸惑ったゴパルが提案を遠慮しようとしたのだが、既にカルパナは自身のスマホを使って電話アポを取り始めていた。
(うう……これ以上、仕事が増えるのは避けたいんだけれどな)
ゴパルが両目を閉じて小さく呻いていると、カルパナががっくりと肩を落としてスマホをポケットに戻した。
「どこも留守でした。まだ観光シーズンですから忙しいそうです」
ほっとするゴパルだ。自然にニコニコし始める。
「それは残念でしたね。では、シスワの果樹園にでも行きましょうか。パッションフルーツのジュースが美味しかったので、また飲んでみたいです」
今度はカルパナが両目を閉じて小さく呻いた。
「残念ですが、収穫が終わってしまいました」
がっくりするゴパルだ。そんな彼の表情を見たカルパナが、二重まぶたの黒褐色の瞳をキラリと輝かせた。
「でも、屋台にはまだ残っているかも知れませんね。行ってみましょう。そのついでに、イチジク園にも寄ってみましょうか。ちょうど追肥をする時期です。サビちゃんとの約束の時間まで、もう少し余裕がありますし」
シスワのイチジク園に到着すると、追肥の作業中だった。
「こんにちは、皆さん。肥料は足りそうですか?」
「はい、カルパナ様。十分な量です。これって油カスですかね?」
農家の人達と合掌して挨拶を交わしたカルパナが、ゴパルに説明を始めた。ゴパルもスマホを取り出して撮影記録を始める。
「ここでは今回イチジク一本あたり、廃油土ボカシを一キロに草木灰を百グラム混ぜて散布しています。イチジクの根に直接触らないようにしていますので、肥料焼けは起きないと思いますよ」
ゴパルが撮影を続けながら指摘した。
「土ボカシにしていますから、根に触れても大丈夫だと思いますが。この追肥を何度か行うのですか?」
カルパナが穏やかな表情でうなずいた。
「はい。イチジクの花が咲くのは、まだまだ先ですね。それまでに枝葉を伸ばしてもらわないと」
ゴパルが撮影を終えると、少しいたずらっぽい笑みを浮かべた。
「では、シスワの交差点まで行きましょうか。まだパッションフルーツのジュースが残っているそうですよ。冷凍しているので、風味は落ちていると思いますが」
ゴパルがニッコリと笑って答えた。
「大丈夫です。では飲み納めに行きましょう」




