運転手ディワシュ
ゴパルも自己紹介をして、合掌して挨拶を交わした。そして、谷の向かい側に視線を向ける。
確かに、尾根筋にランドルンの集落が見えた。谷はかなり深くて、底を流れているモディ川の川面が見えない。ランドルンへ向かう橋も架かっていないようだ。
「と、言う事は、ランドルンへは、下流のナヤプルまで戻らないといけないのかい? ディワシュさん」
ディワシュ運転手が肩をすくめた。
「上流にチャイ、橋が架かってるぞ。ロバ隊も渡る。車は通れないけどな。まあ、実際には、ナヤプルはあまり使わないな。もっとポカラ寄りのチャイ、ナウダンダに出る山道を使っているナ」
ナウダンダの地名は、覚えている。カルパナ種苗のスバシュ氏が、尾根の茶屋でチヤ休憩をしていた場所だ。分水嶺辺りから、タコ足のように四方へ土道が伸びていた。そのうちの一本が、ランドルンまで続いているのだろう。
ディワシュ運転手が、ゴパルの背をバンと叩いた。やはり今度も咳き込むゴパル。
「アンナプルナ内院だったら、ガンドルンから行くのは回り道だ。下の、つづら折りの道が始まる場所からチャイ、川沿いに向かう道がある。荷物は、そこまで俺が車で運んで、それから先は、強力隊に担いでもらう方が早いし、安上がりだぞ」
強力とは、人力で荷物を運ぶ仕事をする者達だ。土地勘がある地元民を使う事が多い。
「もちろん、ロバ隊で運べる間は、そいつらに任せる。セヌワっていう寒村までは、ロバで行けるんだけどな、その先からは沢道になる。岩だらけでな、ロバの足に悪いんだ。そういう場所はチャイ、人間が運ぶに限る」
なるほど、とメモを取りながら納得するゴパルである。ディワシュとスマホの連絡用アプリを共有して、最後に聞いた。
「ディワシュさん。強力隊の手配も頼めるかな?」
ディワシュがニヤリと笑った。
「おう、任せろ。そうだな、明日、セヌワの宿に泊まってくれ。そこで会うようにチャイ、手配しておくよ」




