アバヤの審査結果
ゴパルがシャーベットを食べていると、厨房からコックコート姿のサビーナが顔を出した。まずはカルパナのテーブルに行って挨拶をし、次いで協会長のテーブルに向かい、一般客のテーブルで談笑してから、最後にゴパル達三人のテーブルにやって来た。
「いらっしゃい。騒がず暴れず大人しく良い子で、ちゃんとイスにお座りしてたのね。えらいえらい」
相変わらずの毒舌を吐くサビーナに、何となくほっとするゴパルであった。今は給仕からコーヒーを受け取って、香りをかいでいる。
「コイと子羊料理、すごく美味しかったですよ。量も多かったので、お腹が膨れて大変です」
クシュ教授が、給仕からコーヒーのお替りをフラスコで注いでもらいながら、サビーナに自己紹介をした。ゴパルをからかった時とは、まるで別人だ。サビーナも丁寧に合掌して自己紹介をした。
互いの自己紹介が済んだ後で、アバヤ医師が口を挟んできた。
「料理ごくろうさま。うまかったよ。さて、面接なんだが、判定を今言っても構わないかね? サビーナ君」
サビーナが協会長のテーブルを見た。協会長がサビーナの視線に気がついて、微笑みながら軽く手を振っている。
その表情を見て、サビーナが小さくため息をついた。
「ラビン協会長さん、かなり不機嫌ね。客席で何が起きたかは知らないけれど、今彼らを見ても半数は給仕スタッフを見下している感じがするわね。人手不足なんだけど、採用は半数かな」
アバヤ医師がつまらなそうな表情に変わった。
「なんだつまらん。ワシと同じ判定じゃないか」
サビーナもがっかりしながら、それでも気をとり直して答えた。
「あら、そうなの。レストランでは給仕のチームワークが大切なのよ。ホテルの掃除スタッフで雇えるかどうか……かしらね。ラビン協会長さんの判断に任せるわ」
ゴパルが内心で冷や汗をかきながら、サビーナとアバヤ医師に聞いた。
「厳しい仕事なのですね。次の募集で人員を補充するという流れになるのですか」
サビーナが肩をすくめて微笑んだ。
「人手不足が深刻だから、そうなって欲しいわね」
一方のアバヤ医師は冷静な口調になっている。
「常連客のワシの立場から言わせてもらうと、質の低い給仕が増えると次からはレストランに行かなくなるものだよ。ピザ屋でたむろするしかなくなるな」
ここでなぜか偉そうな口調にした。
「急いで給仕や厨房スタッフを増やさない方が、客としては安心できる」
クシュ教授がコーヒーを飲み終えて、一息ついた。
「僕も、首都のレストランで気の利かない給仕に当たりましてね。今はそのレストランには行かないな。ポカラでは、そんなレストランが増えないように祈りますよ」
居心地が悪くなったのを感じたゴパルが、おずおずとサビーナに聞いてみた。
「サビーナさん。出来が今一つであっても、就職後に訓練すれば何とかなるものですか?」
サビーナがニヤリと笑った。
「訓練はするわよ。だけど、基礎体力というか基礎常識が無いと訓練もできないのよね。進学する時に受ける学力試験みたいなものかな」
バッサリと言い切ってから、ゴパルを見つめて微笑んだ。
「ゴパル君は合格よ。客席スタッフの給仕として使えるわね。体重も半年間で適正値にまで落ちるからお勧めよ。どう、やってみる?」
ゴパルが両目を閉じて両手を振った。
「いえ……私の性格を考えると、もう手遅れかと。博士課程の三人でしたら、まだ若いですし可能性があるかも知れませんね」
クシュ教授が半分白い麻呂型の眉を愉快そうに上下させて笑った。
「そうかもな。彼らはこれから三交代制で低温蔵勤務になる。ゴパル助手以上に成果を挙げてくれる事を期待しているよ」
勤務っていうよりも、無給の強制ボランティアでしょクシュ教授……と内心でツッコミを入れるゴパルであった。




