ルネサンスホテル
ホテルのロビーに戻ると、アバヤ医師がニコニコしながら待っていた。カルパナに手を振って挨拶したが、カルパナはジト目になるばかりだ。
「アバヤ先生……今日は交流会の食事会で忙しくなります。あまり無茶はしないでくださいね」
アバヤ医師が太鼓腹をポンと叩いてニッコリと無邪気に笑った。
「それとは別件だよ。ホテル協会が新入社員を雇う事になってな。その面接だよ。ワシは横から拝見する係をしているのさ」
アバヤ先生と聞いて、クシュ教授が合掌して挨拶をした。
「ゴパル助手の命の恩人のアバヤ先生ですか。初めまして。この助手の上官のクシュ・クマール・ジョシと申します。何かとお世話になっているそうで、ありがとうございます」
アバヤ医師もすぐに察したようだ。これまた丁寧に合掌して挨拶を返した。一本につながっている眉の両端が軽快に上下している。
「唐辛子スプレー事件の事ですかな。あれはワシも驚きましたよ。ははは。初めまして。ワシは町医者のアバヤ・カント・チョウドリーです。今後ともよしなに」
二人ともに見事な太鼓腹なので、あっという間に意気投合してしまった。身長はクシュ教授が百五十センチほどなのだが、アバヤ医師も百五十五センチくらいなので体型も併せて親近感が沸いたのだろう。
何となく嫌な予感がするゴパルだ。そんな彼の不安を察したのか、クシュ教授がニコニコしながら右手の平をクルクルと上下方向に回した。
「どうかしたのかね? ゴパル助手」
アバヤ医師も同じように右手の平をクルクルさせてゴパルに視線を向けた。
「どうかしたのかい? ゴパル君」
これは、また厄介な火種が増えたなあ……と観念したゴパルであった。とりあえず愛想笑いをする。
「いえ。お二人の友情に幸あれ……」




