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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
肥料も色々あるよね編
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生ゴミ処理とタマネギ畑

 参加者はルネサンスホテルの食材搬入口の脇に設けられている、生ゴミのボカシ処理システムを最初に見学した。予想はしていたのだが、問答無用でカルパナと給仕長から英語での解説を求められるゴパルであった。

(ですよねー……一応、専門家ですしね、私って)

 対岸の王妃の森の木の枝にとまっているカラス達に軽く手を振るが、完全に無視されてしまった。一方でカルパナが視線をカラスに向けると、嬉しそうに枝の上でピョンピョン跳ねている。

(そのうちに何かの芸でも始めそうな勢いだな)


 ゴパルがKLの説明を交えながら、生ゴミのボカシ処理を簡単に説明する。しかし、やはりまだ多少の悪臭が残っているので、参加者は熱心に聞いてはくれなかったようだ。早々に切り上げて、次の場所へ向かっていく。

 軽く肩を落とすゴパルに、給仕長と協会長が肩をポンポン叩いて励ましてくれた。

「まだ、このシステムは試行錯誤を続けている最中です。諸問題が解決された後であれば、注目されると思いますよ、ゴパル先生」

 給仕長の励ましに続いて、協会長も穏やかな視線をゴパルに向けた。

「観光地としては、この生ゴミ問題の解決がとても重要になります。今の所は順調に問題解決を続けていますから、私達はとても期待していますよ」

 ゴパルが頭をかきながら照れた。さっきまで泣いていたカラスが何とやらである。

「励ましの言葉をありがとうございます。ポカラ工業大学に後は任せる段階なんですが、機械化と処理システムの効率化で問題が発生しているという話でした。それが解決すれば、一気に普及すると思います」


 続いて、ホテルが用意した小型のバンに分乗してパメへ向かう参加者であった。レイクサイドの通りは観光客と学生とで混雑しているので、迂回してパメに到着する。

 カルパナとスバシュが案内役になって参加者を段々畑に連れて行った。ゴパルとクシュ教授も一緒について坂を上っていく。しかし、すぐに息が上がるクシュ教授であった。

「さすが山間地だな、空気が薄いよ、ゴパル助手」

「首都よりも低いですよここは。クシュ教授もダイエット目的で何か運動を始めてはいかがですか?」

 そう言って、クシュ教授の見事な太鼓腹を見るゴパルであった。クシュ教授のスーツの上着は、今はゴパルが預って手に持っている。インド圏の人はネクタイを嫌う人が多いのだが、クシュ教授も嫌いなようだ。ネクタイを締めずに長袖シャツの襟を広げている。

 クシュ教授が太鼓腹をポンと叩いて胸を張った。

「太っていないと、葬式の時に余分な薪が必要になるだろう。この体型は脂をたっぷりと含んでいるから、よく燃えるんだよ。葬式を安上がりにするには都合が良いのさ」

 ヒンズー教徒が亡くなると、川のほとりで薪を組んだ台に遺体を乗せてそのまま焼く。焼き終わったら、遺灰を川に掃いて捨てて終了だ。墓は作らないし、仏壇に相当する物も無い。


 ゴパルが少し呆れながら、繰り返して忠告した。

「長生きする方が、クシュ教授の家族親戚が喜ぶと思いますよ。ダサイン大祭、ティハール大祭とネパールに不在だったせいで、家族親戚から文句でも言われましたか?」

 どうやら図星だったようだ。クシュ教授が仏頂面になって押し黙ってしまった。


 険悪な空気になってしまったので、ゴパルが話題を変えた。ちょうど段々畑を登って、KL実験をしている畑の前に到着した所だ。畑はネット柵で囲まれていて、中へ入る事はできなかった。カルパナが参加者相手にKLを使ったタマネギの栽培実験について話し始めた。

 それを見ながらゴパルがクシュ教授向けに補足説明をする。

「見ての通り、今の所は病害虫の発生も少ないですね。順調に生育していますよ、クシュ教授」

 クシュ教授も機嫌を直し始めた様子だ。眉間のしわが消えて、半分白い麻呂型の眉が小躍りし始めている。

「タマネギには元々害虫は付きにくいよ。しかし、生育が見事にそろっているな。生育が順調というのは理解できるよ。しかし、見た目はまだ雑草だな」

 ゴパルが口元を緩めた。

「タマネギの生育初期はこんなものですよね。雑草どころか、雑草に負けやすいですし」

 カルパナと目が合ったのだが、そのまま参加者向けに説明を続けるように合図を送った。カルパナが軽く手を振って礼を示し、参加者に説明を再開した。それを感心しながら見るゴパルだ。

(難アリのクシュ教授は、私が担当しますよ)

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