リテパニ酪農
レカのリテパニ酪農まで、バイクの二人乗りで向かったゴパルとカルパナであった。その途中、軍の駐屯地前でチヤ休憩している軍の偉い人に呼び止められた。仕方なく停車してチヤ休憩をするカルパナとゴパルだ。
カルパナが軽いジト目で偉い人に文句を言った。
「いつもいつもチヤ休憩しているようにしか見えませんよ。バッタライ家が怠け者って言われたらどうするんですか。ちゃんと働いてください」
ガハハ笑いをして批判を受け流す偉い人だ。
「そうキツイ事を言うなよ、カルパナちゃん。ここに居ると、それなりに情報が集まってくるんだぞ」
そしてゴパルの顔を見て、少し真面目な表情になった。
「ゴパル先生。菌やキノコの採集に熱心なのは良い事だけどな、あまり見知らぬ森の中を歩き回らない方が良いぞ。山賊とかまだ居るからな」
口調がさらに真面目な印象になっていく。
「宿の荷物を根こそぎ奪われた被害も出ているんで、貴重品や金目の物の管理はしっかりとな」
思わず背筋を伸ばすゴパルであった。
「はい、気をつけます」
それからもう少しの間だけ、軽く立ち話をしてリテパニ酪農へ向かった。レカが駐車場まで出てきて出迎えてくれた。しかし、寝起き直後だったようで髪がボサボサだ。
「おはよ~。太陽がまぶしくて撃ち落としたくなるよねー」
ゴパルがヘルメットを外して挨拶をしたのだが、レカの反応がかなり遅い。スマホ盾も装備していないままだ。
(これはまだ半分寝ているのかな)
「それじゃあ~培養ハウスに案内するー」
酔っ払いのように、フラフラと歩きながら先導するレカだ。彼女の足元を見ると、見事にサンダルが左右別々になっている。カルパナがレカの肩を支えた。
「ごめんね、レカちゃん。無理やり起こしちゃって」
レカはヘラヘラ笑うばかりだ。しかし、早くもカルパナに全身でもたれているが。
「うへへへ~我はー、やんごとなき貴人だから平気ー。よきにはからえー。ちくしょー、太陽なんて大嫌いだあー」
最終的には、カルパナがレカを背負う形になってしまった。そのまま進んで、河岸段丘沿いの耕作放棄地に建てられている竹製の簡易ハウスの中に入る。以前、チャパコットでキノコ栽培に用いた簡易ハウスと同じ作りだ。ただ、光合成細菌の培養に使うので屋根には何も被せていない。
ズラリと並んだ培養箱を見て、ゴパルが感心しながらスマホカメラで撮影を始めた。
「おお。いつの間にかこんな工場が……」
カルパナがゴパルに同意した。彼女の背中で、すやすや二度寝しているレカを気遣う。
「簡易ハウスですから、半日あれば完成しますよ。培養箱の蛍光灯を点けるために電気を引いていますので、その手間が少しかかったくらいでしょうね」
ゴパルが手早く箱の中を確認して、容器のフタを開けた。蛍光灯に緑色の透明シートを巻いているので、中が緑色に照らされている。培養されている光合成細菌の状態を確認して、ほっと安堵の表情になった。
「問題なく培養できていますね。光合成細菌の純度も高そうです。し尿臭があまり感じられません。香ばしいくらいですね。容器の内側に膜が張っていませんから、雑菌の繁殖も抑えられています。さすがポカラ工業大学ですね」
カルパナも嬉しそうだ。半分寝ているレカが力なくガッツポーズをとった。
「やった~。忘れ去られてたけど、成功だぜヒャッハー」
ゴパルが撮影をしながら素直に謝った。
「すいません。低温蔵で頭が一杯になっていました」
レカを背負ったカルパナが、ゴパルに視線で合図を送った。ゴパルも察してうなずく。
「では、ポカラへ戻りましょう、カルパナさん」




