試食
早速ピザを人数分に切り分けて小皿に分けるサビーナだ。六等分に切り分けてから、余った一片を当番シェフに渡した。
彼は料理中だったのだが、目を白黒させながらも飲み込むように食べてしまった当番シェフである。
ゴパルも割り当てのピザを早速食べ始めた。垂れ目が嬉しさで細められていく。
「焼きたては美味しいですね。焼かれたトマトソースって、モッツァレラチーズやバジルと一緒だといけますね。首都で食べるピザよりも美味しいですよ」
カルナも目を輝かせながらパクパク食べている。彼女はまだ未成年なので、ワインでは無くコーヒーだ。
「うわー……トマトうまっ。チーズも水牛乳の塊って感じですね」
サビーナが割り当て分のピザを切って食べながら、微妙な笑顔で答えた。
「汎用小麦粉ってのが最悪だけどね。小麦粉を食べてるっていう感覚にならないのよ。実際、トマトとチーズにバジルの風味が際立っていて、それを下支えする小麦の風味が弱いのよね」
ゴパルが小首をかしげた。早くもピザを食べ終えていて、白ワインが注がれたグラスに手を伸ばしている。
「トマトとチーズを楽しむには、これでも十分だと思いますよ。あ、でもそうするとタルトみたいになってしまうのか」
サビーナが苦笑した。
「ピザとタルトは別物だけどね。言いたい事は何となく分かるわよ」
カルパナもピザを食べ終えて、白ワインをチビチビ飲み始めた。
「生ゴミボカシが大量生産できるようになれば、色々な小麦品種を栽培実験できるようになります。年明けから本格的に開始でしょうか、ゴパル先生」
ゴパルがうなずいた。
「そうですね。期待に沿えるようになると良いのですが……微生物次第ですね。私達は彼らの手助けをするくらいしかできません」
そういうものなのか、と聞いているサビーナとレカ、それにカルナだ。カルパナだけは深くうなずいている。
「作物も同じですね。過保護はかえって良くありません。難しいものです」
ピザを食べ終えてコーヒーを飲み干したカルナが、サビーナに聞いた。
「そういえば、来週あたりからラプシの収穫が始まるんですが、いくらか売りに来ましょうか? サビーナさん」
サビーナが腕組みをして考え込んだ。
「んー……ラプシか。ビュッフェのインド料理用にアチャールとして出すくらいかな。ちょっと使い道が無いのよね、ラプシって。他には何かある? カルナちゃん」
カルナが少し考えてから答えた。
「そうですね……ジョムソン街道沿いのバグルン産のキウイが出荷を始めたと聞きましたよ。ガンドルンやセヌワでは栽培していませんので、この時期に買っています。欧米人観光客に人気なんですよ」
サビーナがキリリと目尻を上げて、黒褐色の瞳を輝かせた。
「キウイか。それは良いわね。ジョムソン街道なら、ラビン協会長をけしかけて買ってもらうようにできるかな」
レカがようやくピザを食べ終えて、ワインを一口飲んだ。
「ラプシかー。欲しいなー。アチャール好きなのよ~」
カルパナも続いた。
「私にも売ってくださいな。巡礼者向けにアチャールを出してみたいので」
カルナがニッコリと微笑んだ。
「毎度あり。後で売れそうなラプシの量と値段を知らせますね」
そして、ゴパルを見た。ゴパルは無反応だったが、視線を交わして察したようだ。頭をかいて口元を緩めた。
「すいません。父が辛党なので甘いアチャールはちょっと……」
「あら、残念」
その後は、いつもの雑談が始まった。
(厨房の中なんだけどな。さっさと退出した方が店にとって良いのじゃなかろうか)
ゴパルが厨房で忙しく料理している当番シェフに視線を向けると、彼が諦観の面持ちで肩をすくめて力なく笑った。それで察するゴパルである。
(どうやら、いつもの事みたいだな。話題が一区切りしたら、別の場所への移動を提案するとするか)
その間、明日の朝からの予定を頭の中で確認する事にしたらしい。
(サンディプさんの見舞いだけど……酒はダメだろうな。花とかよりも食べ物かな)




