表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
肥料も色々あるよね編
577/1133

オリーブの実と油

 オリーブの実は、緑色のままで収穫してサラダの材料に使ったりもする。今回は黒く熟した段階での収穫だ。サラダ用にも使えるのだが、主な目的はオリーブ油を搾るためである。

 ラジェシュが枝に実っている黒い実を一つ摘み取った。それをゴパルに投げて渡す。大きめのブドウの実ほどの大きさだ。

「結構柔らかいでしょ。油がギッシリと詰まってますからね。で、風が吹いたりすると枝から落ちやすいんですよ。枝から離れた瞬間から油の劣化が始まるんで、注意しないといけないですね」

 ラジェシュが言うには、今収穫しているオリーブの実でも長時間土の上に置いておくと、風味が悪くなって土臭くなるらしい。

 地面に落ちている実を拾い集めて油を搾るのは、そういう理由で避けているという事だった。

「味にうるさいサビーナさんが睨みを利かせていますからね。下手な真似はできませんよ、ははは」

 そのサビーナは、カルナと一緒に作業員にちょっかいを出しているようだ。カゴの中の実を勝手に選別している。

 助けを求めて困惑の視線をラジェシュに送る作業員達だが、ラジェシュは曖昧な笑顔を浮かべるだけだ。


 ゴパルがネットで調べた事を聞いてみた。

「ラジェシュさん。確かオリーブの収穫は、木の下に網を敷いて、木を揺すって実を振るい落す方法が多いって話ですが……ここでは手摘みなんですね」

 ラジェシュが感心しながら答えた。

「へえ、よく調べましたね。大規模な農園では機械を使って木を振動させて、実を振るい落す方法ですね。うちは小規模なので手摘みですよ。その方が選別も楽になりますし」


 オリーブは、新しく伸びた枝に翌年になって実をつける。収穫時に、この新しく伸びたばかりの枝を折ったり傷つけてしまうと、翌年の収穫が減ってしまうのだ。機械で木を激しく揺する方式では、この懸念がある。


 ラジェシュが枝に手を伸ばしてニッコリと笑った。

「うちは酪農家ですからね。牛や水牛の乳搾りの要領で、枝をしごいて手摘みしています。実際、実の痛みが減りますね」

 ネパールの農家は基本的に家畜を飼っている。乳搾りは毎日の日課だ。


 レカが撮影に飽きたらしく、ゾンビのような足取りで戻ってきた。ゴパル除けに、スマホ盾をしっかりと装備したままだが。

「もう十分だー。戻ろー戻ろー」

 続いて、カゴにちょっかいを出していたサビーナとカルナも飽きたらしく戻ってきた。

「油の味見をしに行きましょ。もう準備が整った頃よねっ」

「苦味で口の中がおかしくなってしまったわ。お水ちょうだい、お水」

 ラジェシュが呆れた顔になって、腰に両手を当てた。

「お前らな……本当に遊びにきただけかよっ。ちょっとは収穫を手伝え、コラ」


 結局、十数分ほどだけ収穫作業を手伝う事になった一同であった。それが終わってから、再びバイクとピックアップトラックとでリテパニ酪農へ戻る。

 駐車場では、レカの父のクリシュナ社長が野良着姿で出迎えてくれた。

「お疲れさまでした、皆さん。チヤ休憩してください」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ