キノコの種菌つくり その三
ゴパルが移動して、机の上にガラス室が乗っているクリーンベンチに座った。カルパナ達も一緒に移動する。
ガラス室の中を消毒用アルコールを入れたハンドスプレーで噴霧し、同じく消毒用アルコールを浸した布で床を拭いて掃除する。乾燥ソルガムの種を詰めたウィスキーボトルも丁寧に拭いた。
アルコールランプや針金も入れて、真っ白い菌糸がびっしりと張ったPDA培地のボトルも置く。このボトルも消毒用アルコールを浸した布で拭いた。
ゴパル自身の両手にもスプレーして、指を丁寧に拭いた。最後に紫外線ランプを点ける。
「紫外線ランプは十五分間ほど点けてください」
そう言って、ゴパルが紫外線ランプを消した。代わりにアルコールランプをガラス室の中で灯す。
「それじゃあ、十五分が経過したとみなして、作業を始めますね。移植作業は、このアルコールランプの近くで行ってください」
ゴパルがガラス室内で針金を持ち、先をアルコールランプの炎で炙った。
「指の使い方は、PDA培地を作った際と同じです。針金の先が赤くなったら冷やして、PDA培地をこの針金の先を使って、五ミリ角の大きさで切り出します。こんな感じですね」
ゴパルが慣れた手つきで、針金をPDA培地のボトルに突っ込んで、五ミリ角の菌糸の塊を切り出した。すぐにPDA培地ボトルの口を綿栓で閉じる。
次にソルガムの種が入ったボトルの綿栓を開けた。針金を突っ込んで、ボトルの中央部にPDA培地を乗せる。そして、すぐに綿栓でフタをした。
「指の役割分担ですが、右手親指と人差し指は作業用、薬指と小指は針金の保持を、左の親指と人差し指はボトルを、薬指と小指は綿栓を保持する専用にしてください」
PDA培地を挿入した、ソルガムの種が入ったボトルを、ガラス室から外に取り出した。綿栓の上から紙を被せ、輪ゴムで巻いて固定する。
「これで移植作業は完了です。後は、作業日と通し番号を記したラベルを貼りつけておけば、分かりやすいですね。これを培養して種菌に育てます」
その後の管理は、次のようなものだ。
十度以下、または三十五度以上では、菌糸が伸びずに失敗する。
順調に進めば、十から十五日間でソルガムの種全体が真っ白い菌糸に包まれる。そうなったら、冷蔵庫の野菜貯蔵庫に入れて、低温で菌糸を熟成させる。
その際に、雑菌やカビが侵入して変色してしまったボトルは廃棄する。
「失敗の歩留まりは、三%以下を目指してください」
最後に、ゴパルがウィスキーボトルを手にした。
「オイスターマッシュルームの場合は、もう少し手間をかけると良い結果になります。隠者様は気に食わないかも知れませんが……」
ソルガムの種一キロ当たり、炭酸カルシウムを六グラムと、硫酸カルシウム(石膏)を十二グラム添加する。
これをボトルに詰めて250度で三十分ほど蒸す。他はヒラタケやフクロタケと同じだ。
「オイスターマッシュルームは、雑菌に対する抵抗力が弱いのですよ。ですので、PDA培地や種菌作りでは、より清潔に心がけて作業してくださいね」
カルパナが撮影を終えて、ゴパルに礼を述べた。
「講習ありがとうございました。後は、私達で実習して習熟していきますね」
そして、スマホでレカに電話をかけた。すぐに繋がったようで、短く話を済ませる。
「レカちゃんの所も準備が整ったそうです。オリーブの収獲作業を見に行きましょう」




