バクタプール大学まで
バクタプール大学も休みなのだが、培養している微生物は休んでくれないので、自転車を漕いで往復するゴパルだ。
ラメシュ達が祭りに参加していて留守なのは、ダサイン大祭の時と変わらない。クシュ教授はバングラデシュだ。
微生物学研究室に到着すると、器機を調整して、プログラムの修正を行い、様々な実験の記録をつけていく。
「仕事の量が増えているような気がする……これに、低温蔵の仕事が加わるのか」
それでも、半日ほどで終わった。一息つきながら、インスタントコーヒーを淹れて飲むゴパルだ。ソファーに腰掛けたが、ギシリと変な音がしたので、近くのイスに移動する。
窓の外に広がるバクタプール市の赤レンガの建物を眺めた。今は乾期になったので、白銀のガネシュ連峰が緑の山々の向こう側に輝いて見えている。
ゴパルがコーヒーをすすって、垂れ目を細めた。
「ガネシュ連峰やランタン連峰まで、楽に行ける環境だったら良かったんだけどねえ……さて、そろそろ帰るかな」
微生物学研究室を後にして農学部棟の廊下を歩いていると、育種学研究室のラビ助手と出会った。ゴパルが同情しながら挨拶をする。
「こんにちはラビさん。今日も研究室ですか?」
ラビ助手が苦笑混じりでうなずいた。彼はゴパルと同じくらいの身長だが痩せ型だ。
白衣の裾をパタパタ揺らしながら、太めで長い眉を上下させた。片手には、スナック菓子やジュースを詰め込んだ大きな袋をさげている。
「こんにちは、ゴパルさん。いつも研究室ですよ、ははは」
乾いた笑いをして、ゴパルから視線を逸らした。
「うちのゴビンダ教授がバングラデシュへ遊びに行ってしまって、人手不足が深刻ですよ。本当に、あの教授は、もう……」
ゴパルが頭をかいた。
「誘ったのは、うちのクシュ教授ですけれどね。すいません。あ、そうだ。アンナプルナ内院で、低温蔵の建設が始まりましたよ。私が現場監督をしています」
ラビ助手がにこやかに笑って応えた。
「それは朗報ですね。育種学研究室も冷蔵庫の問題を抱えていますから、ご厄介になるかも知れません。その時はよしなに」




