遥かなるベーコン道
ゴパルがベーコンをナイフで切って、フォークで刺して口に運んだ。すぐに微妙な表情になる。
「ん……? ちょっと豚臭いかな。火は充分に通っているんだけれど」
カルパナも、スラリと伸びた細い眉をひそめている。
「うぐぐ……タンドリチキンに替えた方が良いかも」
一方のレカは普通にパクパク食べていたのだが、感想は辛辣だった。
「餌として食べればいいのー。非業の死を遂げた豚の気持ちになるのだー。供養よ、供養するの~」
協会長は特にコメントをしなかったが、レカに同意している様子だ。
一通り卵焼きを外国人観光客の注文通りに焼いて、ベーコンに添えて出したサビーナがやってきた。そのまま、肩を軽くすくめながらベーコン片を試食した。途端に、険しい表情になる。
薄いゴム手袋を外してリサイクル用のゴミ箱に捨て、両手を洗った。
「卓上プレートで断り書きを書いている時点で察しなさいよ。まあ、燻製液に漬けて炙っただけの、偽物ベーコンと比べると美味しいけれど」
彼女なりに擁護したのだろうが、さらに一片のベーコンを口に入れて、決定的に険しい表情になった。完全なジト目になっている。
「場末の居酒屋で出せても、あたしのレストランで出せる品質じゃないわね」
結局ベーコンはほとんど食べずに、目玉焼きだけを二つパクパクと食べるサビーナであった。
彼女は片面焼きで蒸さず、黄身が温まった程度の状態が好みのようだ。白身は分けて、黄身よりも先にフライパンに入れて焼き上げている。
その後、フライパンを新しい物に交換してレカに聞いた。
「ベーコンエッグはこんなモノで良いわよね。編集作業よろしく」
レカがベーコンエッグを一皿分完食して、ニンマリと微笑んだ。
「ブヒブヒ、まかせろー。あ~不味かったー、このクソベーコンめええ」
サビーナがズッキーニを調理台の上に置いて、レカがスマホでの撮影を再開したのを確認する。
「それじゃあ、次にズッキーニのトマト煮か。最初に注意事項から説明するわね」




