目玉焼きはどのように焼くか
新たに目玉焼きを焼き始めたサビーナに、ゴパルが話しかけた。
「サビーナさん。海外の学会の食事会でも、目玉焼きやスクランブルドエッグについては、こだわりを持つ人が多かったですね」
そして、その時の様子を思い出したのか、ゴパルがクスリと笑った。
「焼き方でかなり違ってくるものなのですか? サビーナさん」
一応、参考情報として、ゴパルが自身の好みを告げた。
「私はいつも両面焼きで、黄身も白身も十分に焼き固めた目玉焼きですね。これに、塩コショウにタバスコを振ります。でもこれを時々、参加者から冷やかされるんですよね……どうしてだろう?」
ネパールでは手軽な調味料として、塩と赤唐辛子の粉を混ぜた物を使う。そのノリでやっているのだろう。
レカとカルパナは、ゆで卵派のようで、特に何も反応していない。
サビーナがさらに四個の目玉焼きを焼き上げて、ベーコンと一緒に皿へ盛りつけた。
「ケンカの原因にもなり得るわね。欧米人にとっては、卵焼きの焼き方が違うと、それだけで別の料理になるから」
卵焼きは、片面焼き、両面焼きで最初に大別される。さらに蒸す工程を入れるか入れないかで議論になる。
フライパンに敷く油の種類でも口論になるし、黄身の固さを巡って永遠の対立も生まれる。英語圏では、これらの調理法によって単語も変わる。
加えて、塩コショウにするのか、ケチャップなのか、チリソースにするのか、マヨネーズや市販のソースを使うのか、トーストの上に置くのか、置く場合はそのトーストの焼き具合はどの程度なのか、バゲットの場合はどうするのか、薄いハンバーグや野菜料理、茹でジャガイモの上に置くのか等々……
「アホくさー」
レカがスマホでの撮影をいったん終了して、ジト目になって鼻で笑った。カルパナも微妙な表情だ。
とりあえず、近くにやってきていた協会長が擁護した。
「素朴な料理ほど、思い入れが深いものですよ、レカさん。サビーナさん、早速試食してもよろしいですか?」
サビーナが欧米人観光客からの注文を受け付けて、目玉焼きを各種の方法で器用に焼き始めながら答えた。
「どうぞ、先に食べちゃってください。あたしも、注文が一巡したら試食します」




