ルネサンスホテルのロビー
ゴパルがロビー内で行われている、ビュッフェ形式の夕食会の様子を眺めながら、チヤをすすった。
「さすがに観光シーズンですね、ラビン協会長さん。二十人近くも、お客がいるじゃないですか」
この時期は、欧米からの観光客が増えるので、ビュッフェの料理も洋食が中心だった。
ナスのラタトゥイユや、アスパラ料理、花ズッキーニの包み揚げ、サラダにニンジンスープ、分厚く具だくさんのオムレツ、栽培キノコ料理等。菜食主義者向けの料理も多い。肉料理は鶏肉や豚肉、去勢した山羊肉のローストや、煮込みだ。
これに各種パンとピラフ、それにマッシュドポテトが、デンと大きな場所を取って自己主張している。
この場にはインド人も居るので、北インド料理もあった。
中国人や日本人らしき客も居るのだが、中華料理や日本料理は無かった。サビーナがこれらを知らないので仕方が無い。
ちなみに、北インド料理ではナンはマイナーなので、ローティやチャパティ、香り米を炊いたものや、一般の米で作ったビリヤニになる。ナンは大きいので、ビュッフェ形式では取り皿に乗せにくいという点もある。
副菜としては、野菜の香辛料煮込みや、豆料理が主で、肉料理は骨なし鶏肉の香辛料煮込みくらいだ。その分、キノコやテラピアやコイ、ナマズ等といった淡水魚の香辛料煮込みが多い。
協会長が客と挨拶を交わして、ゴパルに振り向いた。紅茶がまだ半分ほど残っている。
「前回、スクランブルドエッグの話があったそうですね。早速、ホテル協会のサイトで動画を作って公開したのですが、これが思いの外好評でした」
へえ、と興味を抱くゴパルだ。協会長が少し浮き浮きしながら話を続けた。
「ポカラでも、一般家庭に外国人観光客が宿泊する民泊サービスが始まっています。その参考になるという話でした」




