スクランブルドエッグ談義
食事が終わり、皿洗い等の片付けが始まった。
ゴパルも手伝いながら、冷蔵庫の中に並べてある生卵の列を眺め、サビーナに質問してみた。
「サビーナさん。海外での学会で、食事会に参加する事があるのですが、スクランブルドエッグって、地域ごとに特徴がありませんか? 英国と米国とで違っていた記憶があるのですが」
サビーナが鍋を洗い終わって、一息つきながらゴパルに振り返った。
「そうね。あたしも世界中を回った訳じゃないから、詳しくは知らないけれど、確かに特徴があるわね」
スクランブルドエッグは、欧米では一般的な料理だ。
全卵をボウルに割り入れて、よくかき混ぜ、塩コショウを振ってからフライパン等で焼く。ただそれだけの料理なのだが、それでも地域性があるらしい。
「ポカラでもレストランの多くが英国式かな。トーストの上に乗せて食べるから、ちょっと固めなのよ」
よくある作り方は、鍋にバターをたっぷりと入れて、火にかけ溶かす。そこへ全卵を溶いたものを割り入れて、手早くかき混ぜる。食感を出すために、粒状の柔らかい塊が多数詰まったような断面になるように焼くのがコツだ。
「米国式は単独で食べるから、層状になってる事が多いわね。シリアルとかオートミールと一緒に食べるから、さらに固めに焼いてる」
これの一般的な作り方は、全卵を溶いた卵液を注ぐまでは英国式と同じだ。
その後、火が通って固まり始めた底の方をフライ返しを使って、ひっくり返していく。そうする事で、層状に折り重なった断面になる。日本の卵焼きに近い。
サビーナが少しドヤ顔になった。
「あたしの店ではフランス方式ね。ホテルの朝食に使ってる。トロトロした状態のスクランブルドエッグよ」
彼女の場合は、金属ボウルに全卵を入れて、沸騰している湯煎にかけて六分間ほどかき混ぜながら、クリーム状にする。好みのトロトロ具合になったらバターを加えて完成だ。
「塩コショウや、刻んだ野菜、キノコ、茹でた食用のザリガニの身なんかを混ぜる事もするわね。辛味を除いた唐辛子ダシも使うわよ。今回のフクロタケの水煮も候補になるかな」




