パメのカルパナ種苗店
パメに到着したのは、夕方になってからだった。土煙を全身に浴びたせいで、髪がバサバサになっているゴパルだ。
カルパナの弟のナビンに案内されて、まずは洗面所へ直行する事になった。ナビンがタオルをゴパルに手渡しながら、半分感心している。
「仕事熱心ですね、ゴパル先生。ダムサイドのルネサンスホテルに部屋をとっているのでしょう? 小一時間くらい休憩してから、こちらへ来ても構わなかったのですが……」
ゴパルがタオルを受け取って、頭と顔を拭いた。
「ニッキさんやアルジュンさんから、カルナさん宛に『早く戻って来るように』と伝言を頼まれていまして。戻りのバスや小型四駆便に乗り遅れると、大変ですからね」
すると、当のカルナが面倒くさそうな表情で聞いていた。
「今日中に戻るわよ。言伝ありがとね、ゴパル先生」
そして、ゴパルの返事を待たずに、ナビンの顔を見て目をキラキラさせた。口調まで乙女っぽくなっていく。
「ナビンラズ様は、お気になさらず。ティハール大祭のバンドライブ、楽しみにしてますっ。絶対行きますっ」
ナビンが困惑気味に照れながら、カルナを倉庫へ案内した。その様子を見て、納得するゴパルである。
「あ、なるほど。バンドのファンでしたよね、カルナさん。なかなか家へ戻りたがらないのは、そういう事でしたか」
カルナが振り返ってゴパルを睨みつけた。一重まぶたで吊り目気味なので、結構迫力が出ている。
「父さんや叔父達に言ったら、森に埋めるからね」
ゴパルが続いて倉庫へ入ると、既にカルパナとスバシュ、それにビシュヌ番頭が待っていた。三人ともに一斉にゴパルに合掌して挨拶をする。
代表してカルパナが申し訳なさそうに謝った。
「ようこそ、ゴパル先生。すいません、本当にアンナキャンプから呼びつけてしまいました。足腰とか大丈夫ですか?」
ゴパルが明るい表情で答えた。
「はい。思ったよりも、私は丈夫みたいですよ。では早速ですが、PDA培地を作りましょうか」




