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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
肥料も色々あるよね編
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荷物確認

 ゴパルが合掌して挨拶をしながら、サンディプの隣に座った。

「夕食ですか。荷物を運び上げてくれてありがとうございます。部屋の荷物をざっと確認しましたが、壊れている物は無さそうです。さすがですね」

 サンディプがガハハ笑いをして、バンバンとゴパルの背中を叩いた。ゲホゲホと咳き込むゴパル。

 彼の身長はゴパルと同じくらいなのだが、骨太で筋肉隆々の体格なので、存在感が凄い。欧米人の観光客の中にも、筋骨たくましい男が多く居るのだが、全く見劣りしない。

 ゴパルのように腹が脂肪で覆われているような体型では無く、太い首の上に乗った四角い顔が愉快そうに笑っている。

 結構飲んでいるようで、既に顔や耳が赤くなっていた。

「下請けじゃ無くて、直接契約の仕事だからナ。そりゃあ気合いを入れるさ」


 今回、微生物学研究室は、作業工程ごとに個別に業者と契約を交わしていた。

 ディワシュとの契約は、ナヤプルに届けられた荷物をガンドルンの上り口まで運ぶ事だった。強力隊のサンディプとの契約は、ここアンナキャンプまで運び上げる内容だ。日本のように、工務店に一任する方式では無い。


 アルビンが食堂内でビールを飲んでいる欧米人観光客に、追加のビールとピザを届けて、スペイン語訛りの英語で談笑している。

 それが終わると、すぐにゴパルにネパール料理の定食を盆に盛ってやって来た。

「おまたせ、ゴパルの旦那。飯は圧力鍋で炊いてるけれど、それでも少し固いな。ま、我慢して食ってくれ」


 アルミ製の盆の上に盛られているのは、玄米ご飯と、黄色いダル、ジャガイモの香辛料炒め、骨付き鶏肉をぶつ切りにした香辛料煮込み、それにアチャールだった。

 野菜料理としては他に、ミックスベジタブルの冷凍パックを使った香辛料煮込みもある。細かく切ったニンジン、コーン、グリーンピース等をひとまとめに冷凍したものだ。


 ちょっとがっかりしているゴパルに、アルビンが肩をすくめて笑いかけた。

「ディーロは明日から出しますよ。あれって意外と時間がかかるんでさ。今晩は、玄米で我慢してくださいな」

 ゴパルが手を洗いながら穏やかな表情になり、席に戻った。サンディプは、追加でピザとビールを頼んだようだ。

「到着が遅れてしまいましたからね。ご飯にありつけただけでも感謝していますよ。では、いただきますね」


 食事が済んだ後で、酔っぱらったサンディプが、ゴパルの肩に丸太のように太い腕を乗せてきた。

「おう、ゴパルの旦那。それじゃあ、ちと暗いが、外に積んである荷物をチャイ、確認しに行こうや」

 そのまま否応無しにサンディプに引きずられて、民宿の外へ出ていくゴパルであった。


 既に外は星空が広がっていて、周囲の民宿の灯りに枯れ草混じりの地面が照らし出されている。何名か外国人観光客も外を歩いているようで、暗闇の彼方から声が聞こえてきた。

 かなり冷え込んできていたので、手早く荷物の確認を済ませるゴパルだ。スマホのアプリを使った懐中電灯で袋や箱の中身を一通り確認していく。

 その作業も数分で終了した。ふう、と一息ついたゴパルが、笑顔をサンディプに向けた。

「確認しました。全て問題無いですね。これで明日からの建設作業も順調に進みそうですよ」


 サンディプが赤い顔を緩ませて、ニッカリと笑った。酔っ払いの顔になっているので、ニッコリという感じでは無い。

「おう、そうかい。作業員はチャイ、ここの民宿街の連中を使うんだったナ。もし人手が足りないようだったら、遠慮なく俺に電話してくれよナ。当日は無理だけど、三、四日で集めるぜ」

 ゴパルが素直に感謝した。

「ありがとうございます。その際は連絡を入れますよ。さ、寒くなってきたので、宿に戻りましょうか」


 夜寝る前にスマホを取り出して充電をするゴパルだったが、クシュ教授達からメールやチャットが多く届いていたのに気づいた。軽くジト目になる。

「う……明日見ようかな」

 それでも、カルパナ達からもチャットが届いていたので、仕方なくスマホを操作して、返信を送る事にするゴパルであった。

 その後で、協会長から届いた小型四駆便の運行表を改めて確認する。

「へえ、かなりの長距離を往復しているんだ」


 ポカラとジョムソンとを往復する便のようで、一日二往復ある。もちろん、日本のように分刻みの正確な運行表では無く、時刻もあくまでも参考程度の精度だ。


 それでもゴパルにとっては嬉しい内容だったようだ。ベッドに寝転びながら、ほっと安堵の表情を浮かべている。

「おお……本当に前日に予約を入れれば、指定席を得られるようになってる。よし、これでポカラへ行くのが便利になったよ」

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