食事の時間
ニッキが話を切り上げた。カルナにネパール料理を持って来るように指示する。
「長話をしてると、飯が冷めてしまいますナ。続きは飯の後でしましょうや」
カルナが真鍮製の盆に食事を盛って、ゴパルに持ってきた。
白ご飯と、黒ダル、葉野菜の香辛料炒め煮と、ジャガイモの香辛料煮込み、それに骨付き鶏肉の香辛料煮込みだ。これに三種類のアチャールが少量付いている。
水を一口飲んだゴパルが、骨付き鶏肉の香辛料煮込みに注目した。
「ん? 何か甘い香りがしますよ。カルダモンですか?」
カルナが少しドヤ顔になった。
「惜しいわね。黒カルダモンよ。ちょうど今から収穫時期に入るの。良い時にセヌワへ来たわね」
ゴパルが思わず姿勢を正して、カルナを見上げた。
「高級品じゃないですか。東ネパールが産地と聞きましたが、ここでも栽培しているのですね。教授が言ってたのは、コレかあ」
そして早速、手を使って食べ始めた。もちろん、食べる直前に手を洗っている。ゴパルの垂れ目がキラキラ輝き始めてきた。
「おお……豊かな香りですね。鶏肉がより美味しく感じられます」
カルナがニコニコし始めた。
「でしょ、でしょ? 雨の量なら、東ネパールにも劣らないからね、ここは」
ゴパルがフムフムとうなずきながら、ニッキに聞いた。
「ニッキさん。この黒カルダモンですが、半キロほど売ってもらえませんか? うちの上官のクシュ教授が欲しがっていまして」
ニッキが腕組みをして考え込んだ。微妙な表情になっている。
「んんー……仲買人とか、販売先がかなりの量を予約してるんだよナ。即答はできねえ、済まないナ」
がっかりするゴパルであった。
「そうですか……クズ品でも構いませんので、もし余裕がありましたら、後日連絡を私に入れてください」
ニッキがニッコリと笑った。
「おう。ちょいと村長に聞いてみるよ。まあ、当てにしないで待っていてくれや」




