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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
肥料も色々あるよね編
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ナヤプルの居酒屋の前で

 とりあえず居酒屋の前で、ディワシュに確認を取るゴパルである。カルパナに送ってくれた礼を述べて、ヘルメットを手渡した後で、ディワシュに聞いた。

「ディワシュさん。首都から送られてきた荷物ですが、今はどこにありますか?」

 ディワシュが上半身をユラユラ揺らしながら、ゴパルの肩に腕をかけた。

「んー? そりゃあオマエ、とっくにジヌーまで運んだにチャイ、決まってんだろー」


 とりあえず、荷物の送り先に指定されていた、この居酒屋の倉庫に行く。扉を居酒屋のオヤジに開けてもらい中を見た。

 荷物は無く、梱包に使われていたと思えるロープや金具が散らばっているだけだった。

 オヤジが、ゴパルの隣でドヤ顔をしている。

「どうでい、旦那。でっかい倉庫だろー。ディワシュの旦那がチャイ、物置き場にして使ってるんだぜ」

 念のためにゴパルがオヤジに聞いた。

「それでは、首都から送られて来た荷物は、既にジヌーへ運ばれたのですね?」

 オヤジがドヤ顔で胸を張った。ディワシュもやって来て、同じようにドヤ顔で胸を張っている。

「おうよ! バッチリ、キッチリ送っていったぜ。今頃はチャイ、もう強力隊がアンナキャンプまで運んでいる最中だろうさ」


 ディワシュがゴパルの空いている肩に、腕を伸ばしてきた。

「前払い金が景気良かったからなっ。おかげでチャイ、居酒屋のツケも完済だぜ」

 オヤジも満面の笑みだ。

「おう。やっぱり仕事はチャイ、直接請けるに限るなっ。下請けだと中抜きされてチャイ、たまったもんじゃねえよ。ツケ払い完済ばんざーい」

 そして、グルン語で何やら喚き歌い始めたので、その場を離れるゴパルであった。


 カルパナがバイクに乗りながら、心配そうな表情で聞いてきた。

「どうでしたか? 荷物の転売はしていないはずですが……」

 ゴパルがスマホを取り出して、ジヌー温泉の民宿に電話をかけた。

 すぐにオヤジと繋がったようで、挨拶した後で話し始めた。それもすぐに終わり、スマホをポケットに入れて、ようやく安堵の表情になっていく。

「ジヌー温泉の宿に確認の電話を入れました。ディワシュさんの言う通り、荷物は無事に強力隊に引き渡されたそうです」


 ゴパルが苦笑しながら、グルン語で歌っているディワシュとオヤジを眺めた。

「彼らを疑う訳では無いのですが、クシュ教授から絶対に確認するようにと厳命を受けていまして……問題無くて良かったです」

 カルパナもほっとした表情になった。

「では、明日にでもアンナキャンプに荷物が到着しますね。ゴパル先生も、今からジヌー温泉へ向かいますか?」

 ゴパルが頭をかいた。

「いえ。ガンドルンにある、アンナプルナ保護地域の管理事務所本部へ挨拶に行こうと思っています。そこの事務所長さんに、一言挨拶をするのが礼儀でしょう」

 素直に同意するカルパナだ。一方でゴパルが、少し疲れたような表情を浮かべた。

「荷物はジヌーから強力隊によってアンナキャンプへ運び上げられていく予定です。ですので、ガンドルンから直接アンナキャンプへ向かいますよ」


 前回訪問した際には、チヤも出されずに冷遇されて、今後はメールでの報告で良いと言われたのであったが、やはり顔を出しておくべきと考えたのだろう。

 加えて、ガンドルンまで登ると、セヌワまで何度か上り下りをする事になる。その面倒臭さもあるのだろう。

「今日はセヌワで一泊する予定ですよ」


 その話を聞いていたのか、ディワシュがドラ声でゴパルに叫んだ。

「おう、だったら、急げよゴパルの旦那っ。ガンドルンからセヌワまではチャイ、結構歩くぞ。そろそろチャイ、ガンドルン行きの小型四駆便が出る時間だナ」

 ディワシュは運転しないようである。まあ、酔っぱらっているので当然なのだが。

 カルパナがさらに心配そうな表情になって、ゴパルを見た。

「ゴパル先生、何でしたら、私のバイクでガンドルンまで送りましょうか?」

 さすがに恐縮するゴパルだ。慌てて両手を振った。

「い、いえ。この先は酷い悪路です。カルパナさんのバイクが壊れでもしたら大変ですよ。あの小型四駆便で出発しますので、ご心配無く」


 ディワシュが居酒屋のオヤジと肩を組んで、千鳥足でフラフラ居酒屋の前を歩きながら、ドラ声を上げた。

「ガハハ。カルパナちゃん! まだ道は泥沼だぜ。バイクの二人乗りじゃ滑って転んでチャイ、川に落ちるのが目に見えてるぞう。四輪車に任せろやー」

 そして、グルン語で泥道の歌を歌い始めた。もちろん、ゴパルにもカルパナにも理解不能な歌詞である。


 小型四駆便の運転手が、ゴパルに手招きしながらクラクションを鳴らした。一応は、話をつけてあったらしい。

 それを見て、手を振り返したゴパルが、カルパナに改めて礼を述べた。

「席もあるようです。そろそろ出発の時間のようですので、私はこれで。ここまで送ってくださって、本当にありがとうございました、カルパナさん」

 カルパナがバイクに乗りながら、小さくため息をついて肩をすくめた。どうやら、本気でガンドルンまで走破するつもりだったようだ。

「仕方ありませんね。では、道中お気をつけて。ポカラに戻る前には連絡を入れてくださいね」

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