作業を終えて
ゴパルが再び、腕を水道で洗いながら、ほっとした表情で五人の講習生に顔を向けた。
「これで終了です。見ての通り、雑菌を気にするのは、糖蜜と水道水、それとタンクくらいですね。他の器具や、腕は、石鹸で簡単に洗うだけで十分ですよ。私がアンナプルナ氷河から戻る六日後にフタを開けて、出来を確認しましょう」
はい、と返事を返す講習生達だ。
ゴパルが、ガムテープの上をポンポン手で叩きながら話す。
「夏場で発酵の勢いが強い場合、炭酸ガスが噴き出す恐れがあります。それが続く場合には、タンクを改良する方が良いでしょう」
その場合は、タンクの密閉フタに穴を開けて、ホースを差し込む。ホースは穴にしっかりと、ガムテープで隙間なく固定しておくのだが、液面には接しないようにする。発生するガスだけを逃すためだ。液中にホースの先が突っ込んでしまうと、ガスに押されて液がタンクから噴き出してしまう。タンクの外に出ているホースの先は、水を入れたペットボトル等の中に差し込んでおく。
これで、タンク内で発生した余剰ガスは、ホースを伝って、ペットボトルの中の水中から泡になって排出される。
使用したバケツや攪拌棒等を水洗いするゴパルが、空になったビニール製の容器を指さした。
「あの容器は、洗って乾かして保管しておいてください。二百リットルタンク内の培養液の量が少なくなったら、それに注ぎ移して保管すると便利ですよ。KLと培養液は、空気に触れると劣化しやすいので」




