ルネサンスホテル
晴れていれば、ポカラ観光を続けるつもりだったのだが、結局、ダムサイドのルネサンスホテルへ、バスを乗り継いで戻るゴパルであった。
ホテルへ戻ると、ロビーで協会長が、ブラックコーヒーを飲んで待っていた。ゴパルの姿を見ると、ニッコリと微笑んで手を振る。
「ゴパル先生、お帰りなさいませ。雨で大変でしたね。洗濯をご希望でしたら、遠慮なく申しつけてください。ランドリー乾燥ですので、三時間ほどあれば乾きますよ」
ホテルのスタッフから、ゴパルが早速チヤを受け取って、礼を述べてすする。
「うーん、そうですねえ……。では、いくつか頼もうかな」
二階角部屋の自室に戻り、雨に濡れたシャツ等をスタッフに手渡して、チップを渡す。そのまま、時間まで自室で寛ぐゴパルであった。スマホとノートパソコンを接続して、首都の研究室でやり残した仕事を片付け始める。ラメシュ達に、頼んではいたのだが、やはり自身でできる範囲はしたい様子である。
そうこうする内に、夕方になった。
ゴパルのスマホに、協会長とカルパナから、準備が整ったという旨のメールが届く。ホテルの予約時に、知らせておいたアドレスだ。個人情報がダダ漏れになっているが、特に気にしないゴパルであった。
「時間に正確だなあ。ラメシュ達にも見習って欲しいくらいだよ」
チップを渡したスタッフと、他のスタッフに頼んで、部屋から三つの段ボール箱全てを運び出してもらう。ゴパル自身は、機器をリュックサックに入れて担いでいる。
このリュックサックは、キャリーバッグの中に入れていたものだ。中に入っていたダウンジャケットを、いったん取り出した。今は使わないので、キャリーバッグの中に戻す。真空パック袋に入れているので、かなりコンパクトになっている。他の衣服も、同様に真空パック袋に詰められていた。これらも、キャリーバッグの中に収める。
ロビーに降りると、協会長が野良着姿で待っていた。
「このような服装で構いませんか? ゴパル先生」
ゴパルも半袖シャツに半ズボン、サンダルの非常にラフな服装に着替えている。スタッフ達にチップを手渡して礼を述べ、協会長に微笑んだ。
「はい。糖蜜を扱いますから、そのような服装が適していますよ」
既に、ホテルの外には一台のタクシーが停車していた。その後部トランクに、三つの段ボール箱を詰めてもらう。協会長が、ゴパルと一緒に後部座席に乗り込んだ。
「すいません、ゴパル先生。この後、予約客がインドから来ますので、ミニバン車は送迎のために使えません」
ゴパルも続いてタクシーに乗り込み、リュックサックを膝の上に置いた。
「構いませんよ、ラビン協会長さん。では、講習会場まで、ご案内をお願いします」
協会長がタクシーの運転手に行き先を告げた。タクシーが走り出したので、ゴパルに説明する。
「では、パメへ参りましょう。レイクサイドを湖沿いに走った先にある、近郊農業が盛んな集落ですよ」




