野菜のダシ その二
カルパナがスマホで時間を確認して、ゴパルに告げた。
「ゴパル先生。二十分が経ちましたよ」
ゴパルが一息ついて、首を回した。
「経ちましたか。途中からアクが出なくなったので、後半からは結構暇でした」
サビーナがゴパルの横に立って、鍋を見下ろした。すぐに、満足そうな笑みを浮かべる。
「ん。キレイに仕上がっているわね。上出来、上出来。火を消しなさい」
ゴパルが照れているのだが、それに構わずに作業を進めるサビーナだ。
小鍋を取り出して調理台の上に置き、金網ザルを乗せて、さらにクッキングペーパーを乗せ、さらにもう一つ金網ザルを乗せた。
お玉で、鍋のダシをすくい取り、ザルの上から少しずつゆっくりと注ぎ入れる。
「ろ過作業ね。料理に応じて、色々な方法があるんだけど、今回は、コレ」
サビーナの話によると、煮た野菜を押し潰してダシを取る方法もあるという事だった。
「今回は、押し潰さずに、重力だけでろ過をする方法。野菜を細かく刻んで煮たから、これでも充分にダシが取れるのよ」
お玉ですくい取り続けると、鍋には野菜が残った。これを、今度はザルの中に入れる。野菜は押し潰したりせずに、何もせずそのままだ。野菜からダシ汁がポトポトと滴り落ちていく。
「このまま、しばらく放置して、野菜からダシが垂れ終わるのを待つわよ。これで野菜のダシが完成。冷蔵庫で一週間保存できるけれど、小分けして冷凍しておくと、色々な料理に使えて便利ね」
サビーナが、ゴパルを指さした。
「でも、ゴパル君。このダシは甘いから、たくさん使わない事。お父さんが怒るわよ。お母さんにも伝えておきなさい。それじゃあ、これからグラタンを作るわね」




