今日の動画事件
カルパナとサビーナも、彼女らの両親や親戚達に呼び出されて、説教を受ける羽目になった。最後には締めとして、隠者の庵に連れていかれて、説教を受けている。
その隠者も、口元がかなり緩んでいる状態で説教をしているのだが。一通り説教をしてから、最後に二重まぶたの目の奥に光る、琥珀色の瞳を優し気に細めた。
「正直、またかという印象だが、まあ、自ら進んで仕事中に遊んだという事では無いしな。不可抗力だったという事にしておこう。ラムラム。レカ嬢にもワシから一言、言っておくよ」
サビーナが鼻をグズグズさせながら、素直にうなずいた。目元が赤くなっている。
「お願いします。パ、パラグライダーが、あんなに怖い乗り物だったなんて……クソ兄が、サビが泣いた泣いたって腹抱えて笑うし。クソ兄にも、雷を落としておいてください」
サビーナにも、レカと同じく兄が居るようだ。しかも、あまり仲良しでは無い様子である。
カルパナはまだ少し放心状態のようだ。頭が微妙に前後左右に揺れている。
「飛行機とは、全然違うのですね……鳥ってすごいなあ」
隠者が、四人の修験者と顔を見交わして、軽く腕組みをした。ちなみに、修験者達は、今日も白塗り全裸である。全身の毛をきれいに剃っているので、大きなイモリか、サンショウウオのような印象だ。
「今日は、仕事を切り上げて止めておきなさい。その精神状態では、ケガをしやすい。ティーズにでも行って、沐浴して歌って踊ってくれば良かろう」
ティーズ祭というのは、この時期に行われる、女性だけが参加するお祭りだ。赤いサリー等を着て参加するので、赤い色の集団で非常に目立つ。
しかし、この単語を聞いて、カルパナとサビーナが正気に戻ったようだ。互いに顔を見交わしてから、隠者にしっかりした視線を向けた。
「ティーズ祭なので、今晩は女性客だけのディナー予約で満席です。とても、休めません。っていうか、今、店では、料理の仕込みの真っ最中だわ! ぎゃあああ」
「切り花や、ランの注文が殺到していると、ビシュヌ番頭さんから聞いています。私も休めません。あややや」
隠者が腕組みをしたままで、小さくため息をついた。それでも、どことなく嬉しそうな表情だ。
「そうかね。まあ、十分に手元に注意する事だ。包丁や剪定ハサミで指を切っては、つまらぬぞ」
はい!
カルパナとサビーナが力強く応えた。
ラムラムと口の中で唱えながら、琥珀色の瞳に優し気な光を宿していた隠者が、ふと、何かを思い出したようだ。ちょっとだけ、真面目な目元に戻る。
「で、ゴパルは大丈夫だったのかね?」
カルパナとサビーナが、再び目を見交わした。
「あ」




