アンバル運送会社
パメからチャパコットへの湖畔沿いの土道は、泥沼の数が半分ほどに減っていた。そのため、タクシーでも通行できる程度までは回復している。
それでもハンドルを大きく切って、泥沼を避けてノロノロ運転をしている運転手だ。ジェシカとタンも、こういった泥道には慣れているようで、普通に談笑している。
カルパナは一人、バイクで先導して走っていた。やはり、地元民なので土道の泥沼の深さまで知っている。うっかりタクシーが目測を見誤って、深い泥沼に落ち込んでしまわないように、運転手に指示をしている。
そうしないと、ガンドルン行きの小型四駆便でやったような綱引きを、ゴパルがする羽目になるためだ。
今回は、そのような力仕事はせずに済みそうだと、安堵したゴパルが、運転手を改めて眺めた。グルン族の中年男だ。首からは身分証明書をかけているので、それを横から見て確認する。
(アンバル運送会社か。ピザ屋の前でアンバル氏に会ったっけ。タクシー経営もしているんだな)
ピザ屋の前で、バッタライ家のカルパナと聞いて、挙動不審な言動をして逃げていった、中年太りの彼の後ろ姿が思い出された。
こうして見ると、先日の自動車修理業といい、このタクシー業といい、悪い事は特にしていないようである。
このタクシーも手入れがしっかり為されていて、清潔でエンジン音も快調だ。首都のタクシーのように、客席から地面は見えない。
(ただ単に、挙動不審な癖がある人なのだろうな)




