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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
肥料も色々あるよね編
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対策 その一

 落胆する給仕長であったが、改善すべき課題をまとめ始めた。

「分かりました。今回は失敗ですね。まずは水分ですが、野菜の調理ゴミを、水切りしておく前処理をしましょう。バケツを二重底にして、内底を網にすれば対処できます。同時に、細かくする必要がありますので、バケツに投入する前に、ミキサーで粉砕しておきましょうか」

 ゴパルも賛成して、対策を一緒に考える。ジェシカとタンは、この場を早く離れたそうな素振りをしていたので、彼女達だけはフェワ湖の畔まで、カルパナが案内して送っていった。


 ゴパルと給仕長が見送って、軽く肩をすくめた。ここからは英語では無く、ネパール語に切り替わっている。給仕長が反省した。

「さすがに生々しかったですね。カルパナさんの友人達に、不快な思いをさせてしまいました」

 ゴパルも垂れ目を細めて、もう一度肩をすくめた。

「初めての人には、ショックが大きいかも知れませんね。でもまあ、有機農業の専門家でしたら、こういった事もしっかり見て欲しいものです」

 カルパナが駆け足で戻って来た。給仕長に謝る。

「すいません、ギリラズ給仕長さん。気分が少し良くないそうで、湖畔の散策を勧めてきました。私達だけで対策を考えましょう」

 ゴパルが真面目な表情でうなずく。

「分かりました。では、それぞれ検討していきましょう」


 三人がゴミ搬出場に立ったまま、あれこれ話し合った結果は、次のようなものだった。

 まず最初に、アルミホイルや紙タオル、ホチキスの留め針や、ラップシート等は、生分解性であっても除去しておく。分解するまでに数週間ほどかかるので、ボカシ化の妨げになってしまうためだ。


 次に、廃油や獣脂は、別に集めて処理する事になった。ゴパルが提案する。


挿絵(By みてみん)


「獣脂はミキサーで砕いておきましょう。それと廃油を混ぜます。これに、乾いた土と、米ぬか嫌気ボカシを十%ほど加えて混ぜ、ソボロ状態にします。この時に、卵の殻や、魚や家畜の骨を砕いた物を加えましょうか。最終的な水分調整は、KL培養液の原液を使えば良いでしょうね。一か月間ほど密閉タンク内で発酵させれば使用できるはずです」

 カルパナが二重まぶたの黒褐色の瞳を輝かせた。

「油かす肥料の代わりですね。かなり効くと思いますよ。魚の骨も砕いてあれば、ケガの心配は無いでしょうね」

 カルパナの喜び様を見て、給仕長も一重まぶたの目を細めた。

「分かりました。油脂については、その方法で試してみましょう」


 次に問題になったのは、食べ残しと、廃棄素材、家畜や魚の廃棄内臓の処理だった。ヒンズー教では他人が口をつけた食べ物は不浄である。給仕長が提案した。

「ネワール族の元不可触民カーストの人達が、清掃会社を経営しています。ルネサンスホテルのゴミ回収と、処理も請け負ってくれているのですが、この会社から一人のスタッフを出向させてみましょう。カーストを利用しているようで、心苦しいのですが、これが最善かと思います」

 カルパナも悩んでいたが、給仕長と同じ結論に達したようだ。

「清掃カーストですから、処理のノウハウは一番豊富ですよね。分かりました。ですが、待遇を良くしてくださいね。私からも、ラビン協会長さんにお願いしておきます」


 ゴパルが、それを踏まえて処理方法を二人と話し合った。その内容は次の通りだ。


挿絵(By みてみん)


 食べ残しや、廃棄食材、それに廃棄内臓には、かなりの水分量がある。そのため、ドラム型の網に入れて、遠心分離で脱水させる。自転車の後輪部を改良した遠心分離器が、養蜂農家を中心に広く利用されているので、それを使う。

 脱水後、ミキサーにかけて粉砕し、米ぬか嫌気ボカシを加えて予備発酵させておく。

 後は、二重底の密閉容器に入れて保管して、石などを乗せて水気をできるだけ抜いておく。それを、生ゴミボカシを作る際に取り出して、材料の一つとして使う。

 カルパナが注意喚起をした。

「内臓は栄養分がかなり高いのです。堆肥化で多く使ってしまうと、堆肥が腐ってしまったり、畑の中で腐ってしまう事があります。使用には慎重になってしまいますね」

 この生ゴミ処理方法では、相当量の米ぬかを使う事になる。その点も話し合われて、レカナートの養豚団地や、ポカラ盆地の東端の養鶏企業が確保している水田の、拡張事業に協力する事になった。

 豚や鶏の餌にも、米ぬかが大量に使われているので、それに便乗するという形だ。


 最後の問題点としては、脱水で生じた排液の処理がある。これについては、液肥にする事になった。排液は毎日処理する。翌日に持ち越すと腐敗が始まってしまうためだ。

 排液量に対して、五%量の糖蜜と、二%重量の砂糖、五%量のKL培養液を混ぜる。これを密閉タンクに入れて、三十度の液温で十日間発酵させる。


挿絵(By みてみん)


 ゴパルが注意事項を挙げた。

「恐らく、大量の炭酸ガスが発生すると思います。タンクのガス抜き器は、忘れずに取り付けておいてください。ペーハーが三・五以下になれば完成です。肥料成分がそれなりにあるので、水で百倍に薄めて、液肥として使うと良いでしょうね」

 ガス抜き器は、KL培養で使用している物だ。フタに穴を開けてガス抜きパイプを通し、パイプの先を水の中に突っ込んでおく簡単な構造の物である。

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