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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
肥料も色々あるよね編
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その場を離れて

 とは言ったものの、レカ達が居ないリテパニ酪農へ行っても何もできない。

 とりあえず、カルパナがスマホで、リテパニ酪農に居る、レカ父のクリシュナ社長に電話をかけたが、留守だという事務員からの返事だった。

 カルパナが肩を落として、ゴパルに報告する。

「クリシュナ社長は、養豚団地や養鶏企業の社長さん達と、サビちゃんの店で会食中という事でした。今回は残念ですが、リテパニ酪農へは行けそうもありません」


 他にも、あちこちに電話をかけるカルパナであったが、皆外出中であった。そのうちの何名かは、この群衆の中に紛れているらしい。

「良い機会だと思って、ベグナス湖で魚の養殖をしているヤードさんを、ゴパル先生に紹介しようと電話したのですが……この群集のどこかに居るそうです。彼は、スマホを持たずに来ているそうなので、連絡が取れません。すいません、ゴパル先生」

 ゴパルが、にこやかに微笑んだ。

「もし会えたとしても、この場所では雑談をするだけに終わりますよ。KL事業はまだ始まったばかりですから、ゆっくりと進めていきましょう。カルパナさんの畑仕事に支障が出ては、本末転倒です」

 ゴパルの言う事は、確かにその通りなので、素直に従うカルパナだ。

「そうですね、どうも、先を急いでしまう癖があるのですよね、私。分かりました、魚養殖の方とは、時期と機会を見てから考える事にしますね」

 ゴパルが冷や汗をかきながら、それでも穏やかに微笑んでうなずいた。

(うう……結局、魚にまで手を広げるのか。これは、養殖の勉強もしないといけないなあ)


 実際、現状ではヒラタケと、次に予定しているフクロタケ栽培の勉強で、手一杯の状況だったりするゴパルだ。養殖については、農学部の関連する研究室に聞けば良いかな、と考えて、話題を変えた。

「では、せっかくですから、シスワで何か果物を買っていきましょうか。カルパナさんの弟夫婦の家に、今晩ご厄介になりますので、その手土産に何か持って行こうと思います」

 カルパナが微笑んで、バイクの駐輪場へゴパルを案内した。

「弟夫婦も喜びます……ええと、今は、シスワではグアバとスナックパインの収獲中だったかしら。ぜひ試食してください。赤パパイヤと大バナナは、弟夫婦が食べ飽きているので、それ以外にしましょうか」

 希少種の果物なんだが、さすがはカルパナさんの弟夫婦だなあ、と感心しているゴパルだ。そこへ、カルパナがバイクを引き出してきた。


 ゴパルからヘルメットを受け取り、頭に被る。フルフェイス型では無いので、顔の表情がよく見える。

「雨が多いポカラですが、メロンの露地栽培もしていますよ。そろそろ、その自家採種の準備が終わる頃なのですが……」

 カルパナが、パッチリした二重まぶたの黒褐色の瞳を、少し曇らせた。

「ちょうどゴパル先生が、首都へ戻った後に作業をします。見てもらいたかったので少し残念ですが、仕方がありませんね。別の野菜の自家採種を、ゴパル先生に見てもらうようにしましょう」


 自家採種と聞いて、ゴパルの垂れ目がキラリと輝いた。彼もヘルメットを被り、バイクの荷台に歩み寄る。

「在来種の育種ですね。興味があります。ポカラのような亜熱帯性気候で雨が多い地域は、トマトもそうなのですが、メロンも病気にかかりやすいのですよ。在来種の研究をする事で、色々な事が分かります」

 カルパナが照れて、バイクのエンジンを点火した。

「大した事はしていませんよ。ですが、自家採種と育種を続ける事で、ポカラに合ったトマトやメロンになると、有機農業団体の団長さんや、隠者様が仰いますね。私も、そのような気がします。では、シスワで果物を買ってきましょうか」

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