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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
氷河には氷があるよね編
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赤サビ病、いもち病

 小麦の赤サビ病と、いもち病は、インドから北アフリカ諸国にかけての国々を中心に、世界的に流行していた。菌による感染で、小麦の茎葉のみならず実まで浸食する。この地域の小麦農地の、実に半分が感染して、収穫量が激減していた。

 現在では、これらの病気の流行が起きていない、清浄国からの輸入に頼っているのが現状であった。米国やカナダ、欧州各国が清浄国となっている。

 赤サビ病は、単一の病原菌によるものではなく、三種類以上の複数の菌によって引き起こされている。そのため、農薬による駆除が困難になっていた。

 いもち病については、原種を含めた全ての小麦品種に、これに抵抗できる遺伝子が無い。感染したら、それで全滅になる。


 協会長も、この現状を知っている様子だ。深刻な表情ながらも話を続けた。

「ゴパル先生と同じ、バクタプール大学の農学部育種学、ゴビンダ先生の研究に協力して、耐病性の小麦の品種開発を進めています。遺伝子組み換えや、ゲノム編集等の最新技術を駆使していますよ。大学の試験圃場での栽培試験も、無事に終了しました。その結果を受けて、西洋の太陽暦での昨年末から実際の農地で、栽培試験を開始しました。収穫量も、まずまずでしたよ」

 ゴパルが両手をテーブルの上で組んだまま、うなずいた。

「なるほど。それで、ゴビンダ教授のチームが、ポカラで講演会を開いていたのですね」

 しかし、ゴパルの表情は明るいものでは無かった。どちらかと言えば、少々懐疑的に思っているようである。


 植物の病気には、主犯となる病原菌やウイルス等があるのだが、他の菌も関与する場合が多い。それらの菌は日和見菌と呼ばれ、普段は害を為さずに暮らしている。そして、宿主である植物体が弱まると、これらの日和見菌が一転して、病原菌を手助けするようになるのだ。

 上手に使うと、作物の収穫ゴミである残渣ざんさを、堆肥にする際に有効利用ができる。反面、病原菌の巣と化す恐れもある。

 しかし、このような話は、少々専門的に過ぎる。話題にしないゴパルであった。


 協会長が、ゴパルの反応を注意深く見つめながら、話を続ける。

「この事業が順調に進んだ場合、ポカラだけでなく、周辺の郡でも栽培が広まります。農地は余っていますからね。その際に問題になるのが、肥料です」

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