地産地消
協会長が、食堂スタッフに水を頼んでから、ゴパルに向き直った。表情がやや真剣味を帯びている。
「肥料が足りていないせいですね? ゴパル先生」
ゴパルが食べ終わり、ミルクティーを口に含んだ。
「……正確には、土壌の肥沃度が足りていないせいですね。作物ごとに、必要となる土壌養分や栽培条件は異なります。単に化学肥料や、有機肥料の投入量を増やしただけでは、解決できませんよ」
そうですか……と、ため息をつく協会長であった。それでも、食堂スタッフが運んできたコップを受け取り、水を飲んで気を取り直したようだ。
「ですが、我々としては、この問題を何とかして解決する必要があります。まずは、ここで使われている材料について、簡単に説明をしますね」
最初に指を指したのは、花壇だった。
「花は全てポカラ産です。花卉栽培はポカラや周辺地域で盛んです。農家との契約栽培で、ホテル協会として一括調達をしています」
ゴパルがうなずいた。ついでに、口元を紙ナプキンで拭く。満腹になったようだ。
「そうでしたか。道理で、先程の店と花の種類が、ほぼ同じなのですね。首都と違って、亜熱帯性の花やランがあるのが、好印象だと思いますよ」
「そう言ってくださると、嬉しいですね。紅茶とチーズも、ポカラ産を増やしています。コーヒーは隣のシャンジャ郡の産品ですよ」
協会長が嬉しそうに笑った。続いて、ピザやパスタを調理している、オープンキッチン式の厨房に目を向けた。
「小麦は、残念ですが輸入物です」
ゴパルが目を閉じて、両手をテーブルの上で組んだ。
「そうでしょうね。赤サビ病と、いもち病が流行していますから」




