チヤをすすりながら
そのような事情を察したのか、協会長がさらに説明を加えてくれた。
「首都からチベットへ抜ける道は、道幅の拡張工事が終わりましたので、便利になりつつあります。ポカラからチベットへは、昔は交易街道がありました。ですが、今は閉鎖されて久しいですね。年に二回だけ、短期間の国境開放がある程度です。ですので、現在計画検討されている、チベットから首都を経由してポカラや、ブトワルのルンビニまで至る鉄道路については、期待していますよ」
協会長の淡々とした口調からして、望み薄かなと直感するゴパルであった。
「観光客に人気なのは、アンナプルナ連峰の景勝地ですが、これも悪天候が続く季節があります。この雨期のように、閑古鳥が鳴く時期が結構ありますね」
これも、ゴパルが車窓から見てきた通りだ。首都も同様に、雨期は閑古鳥の鳴く季節である。
「ホテル協会のポータルサイトで紹介している、ジョムソンやマナンは、今の時期は陸路でしか行けません。悪天候が続きますので。実際に、ジョムソン空港は、世界有数の空の難所ですからね。マナン空港に至っては、季節運航しかできません。旅程に日数がかかると、どうしても客足は遠退きます」
協会長が、チヤを飲み干して、肩をすくめた。ジョムソンとマナンは、ポカラからアンナプルナ連峰を越えた向こう側にある町だ。
「ですので、外国人観光客に大きな期待をする事は、残念ながらできません。重要な収入源ではありますが」
ゴパルもチヤを飲み終えて、陶器のティーカップをスタッフに返却した。
「なるほど。まあ、首都も同じような問題を抱えていると思います。外国人観光客に頼らない経営戦略というのは、考えておくべきなのでしょうね」




