ベグナス湖
結局、もう少し時間が余っていたので、シスワ地区の北の端にある、ベグナス湖までバイクで走る事になった。ものの数分も走ると到着する距離になる。
ベグナス湖の南岸は、人工的な堤防が築かれていて、その堤の上には車道がある。そこにバイクを停めて湖を眺めるカルパナとゴパルだ。ゴパルが垂れ目を輝かせた。
「フェワ湖よりもきれいな湖ですね。レイクサイドのような繁華街も無くて、落ち着いた風景です」
実際は、数軒の民宿や食堂が、湖の畔に建てられているのだが、レイクサイドやダムサイドと比較すると、圧倒的に牧歌的だ。
堤防のそばには、民間の魚の養殖場と、政府の養殖研究所があり、いくつものコンクリート造りの池が掘られていた。
その民間の養殖場では、既に数名の作業員が餌やりをしている。その中の一人が、カルパナを見つけて手を振った。
「やあ、カルパナ様。魚を買い付けに来たんかい? 鯉もソウギョもテラピアもナマズも育ってるぜ。よりどりみどりだぞっ」
カルパナがバイクを押しながら、片手を振って断った。
「すいません、ヤードさん。今日は、ここのゴパルさんの観光案内を手伝っています。また後日、お伺いしますね」
その言葉で、おおよその状況を察したようだ。ハワスと軽く敬礼したヤード氏が仕事を再開した。
ゴパルが、ヤード氏が仕事をしている民間養殖場を、スマホで撮影した後で、ベグナス湖の牧歌的な風景も撮影した。そして、時刻を確認する。
「カルパナさん。色々な場所を案内してくださって、ありがとうございました。そろそろポカラへ戻りましょうか」
カルパナが微笑んで、ポケットからスマホを取り出した。
「そうですね。それでは、サビちゃんに、これから向かうと知らせておきますね」




