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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
氷河には氷があるよね編
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ポカラ国際空港

 プロペラ機という事もあるのだが、ふんわりと着陸した。飴玉二個と紙コップ入りの炭酸飲料を出してくれた、CAに別れの挨拶をして、タラップを降りる。やはり雨が降っていた。首都よりも標高が四百メートルほど低いので、雨もそれほど冷たくはない。その分、雨の降りは強めだが。

 当然のように雨除けの設備は無いので、駐機場から雨に濡れて徒歩で、国内便ターミナルへ向かう。ラメシュから渡されたハンドタオルで頭や服を拭くゴパルだ。その後、機内の貨物室に預けていた、キャリーバッグを受け取る。

 ベルトコンベアに乗せて受け取る型式では無く、出発時と同じだ。担当係官が荷物を、少々錆びついたカーゴに乗せて、カウンターに持ってくる。カウンターに山積みされていく荷物を、乗客が指差して、係官から受け取るという形式である。

 ゴパルもキャリーバッグを無事に受け取り、国内線ターミナルの中を外に向かって歩いていく。建物内部を見回すと、あちらこちらに中国語の表記が目立った。

「そう言えば、この空港は中国の資金援助で拡張工事されたんだっけ」


 国際線のターミナルには、中国チベットや四川省からの飛行便が就航しているとある。インドからも何本か飛行便があるようだ。

 ゴパルが、今後の事業計画という、中国語と英語の題名の大きなパネルを見上げた。鉄道も敷設する計画のようである。中国チベットの都市から国境を越えてネパールの首都へ、そして、そこからポカラと、インドに接するテライ平原の観光地へ接続する鉄道路線だ。

 いつ完成するのかは、記載されていないので、あくまでも計画段階なのだろう。他には、中央ネパールに広がる平原の、テライ地域で建設中である、別の国際空港についての宣伝ポスターもあった。

 一方で、インド政府も、ポカラまでのバス路線の拡充を宣伝していた。首都デリーやコルカタ、ネパールに接するUP州とビハール州等からの定期バスがある。そのバス料金の割引サービスの案内もあった。

「でも、今は雨期だからなあ……」

 閑散とした空港内でゴパルが肩をすくめた。やはり、ヒマラヤ山脈が見えない期間は、観光客が少ない。


 国内線ターミナル内では、ホテルやレンタカー、それに両替の客引きが、ゴパルに群がってきた。外では、タクシーの客引きだ。それに加えて、ボロボロの衣服を着た子供達や、赤ん坊を抱いた女性、それに片目の無い老人等が、手を伸ばして群がってくる。

 彼らの中で、お腹が空いていそうな人を見つけて、五ルピー札を渡す。もっとくれ、と詰め寄ってくる者もいるが、そういう連中は無視するゴパルであった。彼らも忙しいようで、二分もすると別の客に群がっていく。

「昔は、宿まで追いかけてきたものだったけれど……さて、出迎えは来ているかな?」

 タクシーの客引きをキープしつつ、ターミナル前の駐車場を見渡す。と、一人の身なりの良い男性が手を振っていた。白髪交じりの髪を、七三にきちんと分けている。白いミニバンには『ルネサンスホテル』という文字が書かれていた。

 すぐに、ゴパルの名前を書いたボードを手に、こちらへ傘をさして歩いてきた。そして、胸の前で両手を合わせて、合掌した。一般的な挨拶である。

「ゴパル・スヌワール様ですね?」


挿絵(By みてみん)


 客引きに別れを告げて、ゴパルも合掌する。彼の場合は、傘をさしていないので所作も簡単だ。

「はい。お出迎え、ありがとうございます」

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