レカが去って
続いて、駐輪場からバイクを出してきたカルパナと、スクーターを出してきたサビーナがやって来た。ゴパルが、まず最初にサビーナに礼を述べる。
「サビーナさん。今日は、お忙しい中、時間を割いてくださって、ありがとうございました。首都に戻ったら、早速、ミネストローネスープとスペイン風のオムレツを作ってみますね」
サビーナが、ヘルメットを小脇に抱えてニッコリと微笑んだ。
「オムレツは、フライパンを使う方法と、炊飯器を使う方法とがあるから、両方を試してみると良いわよ。炊飯器だと、蒸しオムレツになって、別の料理になるけれどね」
恐らくは、茶わん蒸しみたいな状態になるのだろう。急いでスマホにメモするゴパルだ。
サビーナが、隣のカルパナを肘で小突いた。
「ほら、カルちゃん。言う事があるでしょ」
カルパナが、目を伏せて、ゴパルに申し訳なさそうに伝える。
「もう、サビちゃんてば。あの……ゴパル先生。明日の朝なんですが、その……農場を見ていただけませんか? ちょうど、冬トマトの育苗を明日開始するのです。他に、私が指導しているシスワの農家で、果物の収獲が始まりました。その場所でも、何か助言してくださると助かります」
ゴパルがスマホを手にして、明日の予定を確認する。
「明日は、夕方前の飛行機で首都へ戻ります。それまで時間があるので、喜んで同行しますよ。ですが私は、農業の専門家ではありません。気の利いた助言は、期待しないでくださいね」
カルパナが、ほっとした表情になった。
「良かった。では、明日、このバイクでお迎えに上がりますね。農場ですので、泥汚れが多少付いても構わないような服装でお願いします」
サビーナがゴパルに微笑みかけた。こちらは、少々ドヤ顔風味だ。
「夕方前か。それじゃあ、ランチを御馳走するわね。ゴパル君が泊まっている、ルネサンスホテルのレストランに来なさい」
ここで何か察した協会長が、サビーナと目配せをした。すぐにゴパルに微笑む。
「それでは、ホテル協会が明日のランチ代金を負担しましょう。アンナプルナ内院まで行ってこられましたから、お疲れでしょう。美味しいものでも食べて、元気になって、首都へお戻りください」




