二十四時間営業のピザ屋
ピザ屋にはドアが無い、オープン型式なので、そのまま店内へ入るゴパルとカルパナ達だ。
外と同じく、店内でも、大勢の学生や外国人観光客が、賑やかに騒いでいる。外国人の服装は、ラフな半袖シャツやTシャツに、ジーンズや半ズボン、それにサンダルばかりだ。
そんな彼らを眺めて、ゴパルが少し首をかしげた。
(ガンドルンやアンナキャンプの宿泊客よりも、軽装だな。いわゆる、どこへも行かずに、ポカラ市内で過ごす『沈没組』と呼ばれる人達かな)
まあ、ポカラは亜熱帯なので、軽装になるのは当然である。それを考慮しても、山歩きには縁が無さそうな顔ぶればかりだ。
日本人や、欧米の若い女観光客は、ヒッピーのような変な着こなしで、周囲から浮いている。頑張って、サルワールカミーズ姿の女観光客も居るが、これまた着こなしが根本的におかしい。
パン売り場では、今は菓子パンを主に焼いているようだ。その奥のピザやパスタを作るカウンターにも、大勢の客が集まって注文していた。
他には、フランスやイタリアの惣菜を売るカウンターもあり、外国人観光客がガラス越しに物色して注文している。
ただ、これらは協会長が話したように、まだまだ実験的な規模だ。商品数も少ない。まずはピザ屋に集中するというのは、本当のようである。
食堂スタッフが案内して、一行を常連客用のテーブルへ導いた。他のテーブルは、学生や旅行者が占拠していて、空席が見当たらない。
協会長がゴパル達に微笑みながら、席へつくように促した。
「どうぞ、こちらへ。ここは有料会員向けのテーブルなので、いつでも空いていますよ」
実際に、テーブルには数名の客が座っているだけだった。協会長が、彼らに軽く挨拶をしていく。その中に、ゴパルの見知った顔があった。
「ええと……確か、アンナプルナへ行く前に参拝した、ビンダバシニ寺院で、お会いしましたね」
その見知った顔の男が、ゴパルの顔を見て、ニッコリと笑った。
「やあ。大学の助手の、ゴパル君だったかな。また、お会いしましたな。医者のアバヤだ」
協会長が察して、アバヤ医師も食事に誘った。
「お知り合いでしたか。では、これも何かの縁ですから、我々と一緒にピザでも食べませんか?」
アバヤ医師が、鷹揚にうなずいた。彼の手元には赤ワインと、ツマミのチーズ盛り合わせの小皿があるだけだ。
「うむ。奢ってくれるのであれば、大歓迎だ」




