表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
氷河には氷があるよね編
120/1133

天気予報

 果たして、チベット僧の天気予報は的中してしまった。

 その晩から風が強くなり、吹雪になったのだ。それは、翌日になっても止まなかった。結局、丸一日を民宿の中で過ごす事になるゴパルである。

 気温も下がったので、寝袋の上に毛布を三枚被せて寝る。日中も冷えたので、毛布をダウンジャケットの上から被る事になってしまった。

 アルビンが、少し呆れた顔でゴパルに忠告する。

「ゴパルの旦那。仮にも四千メートル級の高地だからよ。きちんとした防寒装備は必須だぜ」

 ぐうの音も出せないゴパルである。

「そうですね。夏なので油断していました。次回からは検討してみます」


 結局、自室では寒いので、ゴパルが食堂へやって来た。ノートパソコンのキーボードを、パコパコ叩いて仕事を片付け始める。

 手元には、当然のようにチヤ……ではなくて、ミルク無しの砂糖入り紅茶が、中ジョッキで置いてある。水分補給のためなのだが、であれば、利尿作用のある紅茶ではなくて、白湯にすれば良いはずだが。その点は、紅茶にこだわるゴパルだ。

 硬水のために黒くなっている紅茶をすすり、撮影した写真の加工をしている。

「今日じゅうに写真加工を終えて、次は動画の編集だな」

 ノートパソコンの横にはスマホも置いてあった。それを使って、首都のクシュ教授やラメシュ達と、チャット形式で、文章やファイルのやり取りを行っている。

「こんな吹雪でも、電波が届くとはね……」

 テレビはアナログ放送なので、この吹雪の中では砂嵐状態になっていた。携帯ラジオもダメだ。その一方で、スマホからは、ラジオ放送が良い音質で流れている。曲は、数年前のヒンディー映画の挿入歌だが。

 首都では、もう晴れ間が見えているという書き込みなので、ここも明日には天気が回復するだろう。


 民宿のオヤジのアルビンが、ニヤニヤしながら食事を運んできた。

「大学の先生は、大変だねえ。酒は、どうしますかい?」

 ゴパルが背伸びをして、仕事を中断した。ノートパソコンを閉じて、スマホのチャットアプリに『これから食事』と書き込む。

「そうですねえ。シコクビエの焼酎を、ぬる燗で頼みます」

 アルビンが、少し呆れた表情になって微笑んだ。

「ゴパルの旦那。シコクビエが本当に好きなんだな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ