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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
氷河には氷があるよね編
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高級品の世界

 インド圏の諸国では、これらの作物が感染する、壊滅的な病気が流行していた。人や家畜への感染は起きないのだが、これら作物の生産量が激減しているのである。

 現在は、遺伝子組み換えや、ゲノム編集等の先端技術を駆使して、これらの病気の流行を克服しようと、国を挙げて対策が進められている。このポカラでの復活事業も、その一環だろう。

 ゴパルが、垂れ気味の黒褐色の瞳を軽く閉じて、ポリポリと頭をかいた。

「欧州等の清浄国から、小麦やオレンジを輸入し続けると、外貨の流出が止まりませんからねえ。ますますネパールが、貧乏国になってしまいますよ」

 ちなみに、ネパールの国内総生産は、世界中の全ての国の中でも、下から数えた方が早い。

 クシュ教授が、ゴパルの肩に両手を置いた。結構、節くれだっている指なので、ハゲワシが獲物をつかんだようにも見える。余談だが、ネパールには冬になると、ハシボソハゲワシの群れが、渡って飛んでくる。

「ふむ。と言う事は、ポカラでも農業や畜産面で困っているという事だね。では、我々の武器も持って行きなさい、ゴパル助手」

 ゴパルが再び目を閉じて、口をへの字に結んだ。

「それって、もしかすると、私に商品の売り込みをしてこい、という事でしょうか? クシュ教授」

 クシュ教授が、半分白い麻呂眉を右の方だけ上げた。

「理解が早くて助かるよ」


 もちろん、大学は非営利団体なので、商売は認められていない。この場合は、大学に献金したり共同事業を組んでくれる、協賛企業の商品宣伝という事になる。

 クシュ教授が、ゴパルの両肩をガシガシ揉みながら、大きな黒い瞳をキラリと輝かせた。

「ちょうど今、複合微生物資材KLが商品化されたばかりだ。初の国産の汎用微生物資材だ。製造会社が倒産してしまうのは惜しい」

 ラメシュが一言添えた。ちょっとニヤニヤしている。

「ゴパルさん。では、ついでに栽培キノコの宣伝も、よろしくお願いします」

 他の二人の博士課程も、ラメシュの背中に隠れてゴパルを励ましてきた。一人は身長が百七十五センチの小太りで、もう一人は身長が百六十センチで、こじんまりとした体型だ。

「ポカラって、バスで半日かかりますから、僕達では、なかなか行く機会が無いんですよ。でも、有名な観光地ですし、学生の街でもありますから、楽しんで来て下さいね」

 ゴパルがリンク先の動画サイトで、ポカラの観光地を紹介する短編動画を見ながら、軽くため息をついた。フェワ湖という小さな湖で、船遊びをするネパール人観光客の様子が、ネパール語のナレーション付きで映し出されていた。字幕選択で英語等に変換できる仕様のようだ。

「でも、大雨が続いているんだけどね……」

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