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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
氷河には氷があるよね編
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ポカラのホテル協会

 サイト構成は、画面の小さなスマホでも、楽に閲覧できるようなフラットページだった。

 言語選択ができて、初期設定はネパール語になっている。選択肢を見ると、北インドで主に使われているヒンディー語、東インドで代表的なベンガル語、他にタミル語等の南インドの代表的な言語が最上部にあった。続いて、北京語、米国英語、アラビア語、フランス語、スペイン語等が選択できるようになっている。

 その内の一つ、スペイン語を選択したクシュ教授が、太鼓腹をポンと叩いた。

「機械翻訳か。まあ、六割程度の正確性だな」

 他の言語での表示にも切り替えて遊ぶ教授である。上位表示の十言語をざっと見比べて、フンと鼻を鳴らした。

「上位のフランス語までは、九割ほど正確だな。機械翻訳してから、人力で修正しているようだね。首都のホテル協会のポータルよりも、質が良いかもしれないな」

 ゴパルも言語表示を見ながら、素直にうなずいた。ブラウザの機能で、サイトの記述設定を呼び出して、ざっと見る。

「そうですね。サイトの文法も国際推奨に準じていますね。ブラウザごとの表示最適化もされています」

 ゴパルが記述設定画面を消して、再びサイトのページを表示した。

 ページの最上部には、ポカラ市と周辺のホテルや民宿の予約状況が簡単に書かれていた。今は雨期の最中なので、どこも空室だらけのようだ。そこから予約サイトへ飛ぶ仕組みになっている。ポカラだけではなく、その近隣の観光地のホテル協会とも連携していた。

「ジョムソン、マナン、ブトワル……へえ。意外と使いやすいかも」

 その下のブロックでは、最新の観光情報と、イベントの告知が紹介されている。動画や地図も見る事ができるようだ。そのイベント告知を、上から手早く見ていったクシュ教授が、スクロールの手を止めた。

「ほう。会議もできるのか」


 そこには、ポカラ工業大学とインド工科大学との交流会が告知されていた。他には、同じバクタプール大学の農学部の育種学研究室のゴビンダ教授が、ポカラの花卉かき農家向けに講習会を行うというイベント告知もあった。花卉というのは、花が咲いたり、美しい葉や果実等ができる観葉植物の総称である。花卉農家とは、一般的には、花農家とか呼ばれている。

 ラメシュが軽く肩をすくめた。彼は身長が百八十センチもあるので、背を丸めて画面を見ている。

「私達よりも早くから、ポカラに関わっているようですね。チヤ休憩の時にでも、ゴビンダ教授の研究室に行って話を聞いてきましょうか」

 クシュ教授が鷹揚おうようにうなずいた。太鼓腹をポンと叩く。

「うむ。そうしてくれ。現地の情報は多い方が良いからね」

 他には、ポカラ市と周辺のレジャー施設や、トレッキング会社、商店、手工業所、寺院、季節情報や主な観光地の情報が配置されていた。その中の、果物情報にゴパルの目が留まる。

「オレンジとパパイヤにバナナ、それに小麦の復活事業か……そうか、それで育種学研究室が関わっているのですね」

 ラメシュが若いのに遠い目をして、今日も雨が降り続く窓の外を眺めた。ついでに曲げていた腰を伸ばす。

「今では、どれも高級品ですよね。小麦だけは、まだ安いですけれど」

 他の二人の博士課程も、同じような顔になっている。

 クシュ教授が、メガネを外して半袖シャツの胸ポケットに突っ込んだ。

「そうだな。物と人の行き来が便利になると、病原体の行き来も活発になるからね」

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