表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
氷河には氷があるよね編
105/1133

食パンと

 ゴパルも強力隊を見送ってから、自身のリュックサックの中に入れていた食パンを一枚取り出した。それを、ニッキに渡す。きょとんとした顔をしているニッキだ。

「どうしたんすか? これ」

 ゴパルが微笑んだ。

「これを使って、菌やカビを採集できます。どこか邪魔にならない場所に、置いてくれませんか。雨や虫にネズミが悪さをしないように、配慮してくださると助かります。できれば、森や竹やぶに近い場所が良いですね」

 ニッキが、まだよく理解できないままだったが、快く了解してくれた。

「そりゃ構いませんが……こんなので、採集できるんすね。あ、古くなったパンにはチャイ、カビが生えるっすね。ソレっすか?」

 うなずくゴパルである。


 他にも、思いついた様子で、いくつか追加し始めた。空のガラスコップを二つ用意する。片方には、少しだけ牛乳を入れた。もう片方には、水を浸した干しブドウを何粒か入れた。

 最後に紙片を、この二つのガラスコップの上に被せた。それらもニッキに見せる。

「ついでに、この二つのガラスコップも一緒に置いてください。乳酸菌と酵母菌を集めたいので」

 ニッキとサンディプが、顔を見合わせた。

「了解っす。ハエ除けの食卓カバーがあるんで、それを使えば簡単す」


 そう言って、ニッキが調理場にある現物を見せた。机の上に乗っている野菜の香辛料炒め煮や、クッキーの上に、その食卓カバーが乗っている。プラスチック製の細かいネットで、半球状のものだ。

 サンディプは、口をへの字に曲げている。

「そんな事して、腐らないのか?」

 ゴパルが垂れ目を細めた。

「腐る前に採集するので、あまり問題はありませんよ」


 そうして、スマホで今後の日程を考える。

 しかし、チベット僧の天気予報を考慮して、考えるのを止めた。山が荒天になると、何日間続くのか分からないものだ。アンナキャンプに、数日間ほど缶詰になる恐れもある。

「アンナキャンプでの仕事が終わって、ポカラへ戻る道中に、再びこの民宿に立ち寄るつもりです。その時に、これらを回収しますね。前日に連絡を入れます。ですが、私が来るまでに、虫やネズミ等が食べてしまったら、不要ですので、そのままゴミに出してください」


 手帳に簡単に実験の内容を記し、それを切り取って、ニッキに手渡した。この実験を開始した日付と時刻が記されている。

「それじゃあ、竹やぶの近くにある倉庫にでも置いておくっす」

 ニッキが民宿スタッフに命じて、ゴパルから預かった物を倉庫へ持っていかせた。それを見送って、礼を述べるゴパルだ。

「ありがとう。では、少し急いだ方が良いかな。デオラリまで行ってみます」

 ニッキが彼のスマホを掲げた。

「後で、デオラリの民宿にチャイ、予約を入れておくっす。この時期は客が少ないから、大丈夫」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ