表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
氷河には氷があるよね編
102/1133

もう少し先

 二人から、揃って心配されたので、ゴパルも不安になってきた。チヤをすすって聞く。

「どこまで行った方が安心ですか?」

 サンディプが盛り上がった肩をすくめた。

「そうだな……マチャキャンプまでだな」

 ニッキは別意見だった。サンディプの答えに、口をへの字に曲げる。

「マチャキャンプへは、ゴパルの旦那の足では辿り着けないナ。とりあえずは、今日じゅうに、デオラリまで進めば良いだろナ。そうすれば、次の昼までにはチャイ、アンナキャンプに着ける。途中のヒマラヤキャンプは、宿の数が少ないしな。デオラリなら、宿も多いし、大丈夫だ」

 ゴパルが素直にうなずいた。スマホで地図を確認する。

「なるほど、デオラリですか。標高は……三千二百メートルか。確かに、翌日は九百メートル登るだけで済みますね」

 九百メートルを半日で登るという行程も、相当なものだが。しかし、セヌワからでは千八百メートルの登りになるので、それに比べると負担は軽くなる。


 改めて指摘するまでも無いのだが、こんな行程は、外国人旅行者には推奨できない。特に、エベレスト街道やランタン街道で、こんな事をすると、高山病で緊急搬送されてしまう危険性が高い。ドクターヘリに乗せられて、首都まで空輸されて、膨大な医療費を請求される事になる。

 ゴパルは、これまでに何度も野外調査に出ているので、高地順応しているだけだ。ニッキとサンディプは現地民だ。それにしても、チベット僧の影響力は、ヒマラヤ地域では相当なものである。


 今日中にデオラリへ向かう利点を理解したゴパルが、おずおずとニッキに謝った。

「すいません、ニッキさん。本当でしたら、今晩はこの民宿で泊まる予定だったのですが……」

 ニッキが屈託のない笑みを浮かべた。隣のサンディプも白い歯を見せている。

「一部屋を年間予約してくれただけでチャイ、十分すよ。強力隊にも仕事が内定したし。デオラリの民宿には、後で予約変更を、俺が伝えておくっす。それじゃあ、何か作りましょうかナ? 袋麺ならチャイ、すぐにできるっすよ」


 ゴパルが残念そうな表情になった。彼の垂れ目は、ロビーで食事をしている欧米人観光客に向けられていた。

 他の宿のスタッフが出したようで、黄色いオハギ状のモノをスプーンで食べている。水牛の澄ましバターであるギーの良い香りが、ゴパルの鼻をくすぐった。

「ディーロを、実は楽しみにしていたのですが……次回の機会にしましょうかね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ