強力 サンディプ
強力隊の補足説明になるが、道が険しい場所では、ロバ隊が使えないので、人力に頼る事になるのだ。
「具体的な資材量は、私がアンナキャンプで現地測量をした後で決まります。しかし、普通の石造りの壁がある小屋を建てる際と、同じような資材量になると思いますよ。どうでしょうか? サンディプさん」
ゴパルの問いに、強力隊の隊長がニッカリと笑った。
「アンナキャンプやマチャキャンプの、民宿建設や補修に増築をチャイ、俺達が今まで全部手掛けているんだよ。そんくらいの資材量なら、何ら問題ないナ」
ほっとするゴパルである。
「では、連絡先を私に教えてください。測量を終えて、建設認可が正式に降りたら、直接サンディブさんに発注します」
責任者は上官のクシュ教授なのだが、言い切ってしまったゴパルであった。
しかし、その辺りの確実性の無さ加減は、ニッキも今までの仕事で経験している。特に指摘する事も無く、七割くらい確実な話として、受け取ってくれたようである。
「了解だ。すぐに動かせる強力は、三名だ。それ以上の人数が必要になったらチャイ、その都度、新規募集する。募集して採用して、現場に配置するまでにチャイ、だいたい一週間くらいかかる。そういう流れを考えて発注をしてくれ」
ゴパルも了解して、スマホの連絡アプリに、彼らのアドレスを登録した。ゴパルが、安堵した表情になる。
「これで、今回の出張仕事の半分くらいは終わったかな。後は、明後日、アンナキャンプまで上がって、測量や調査をするだけです」
サンディプとニッキが、顔を見合わせた。サンディプが丸太のような太い腕を組んで、太い首をかしげて、ゴパルを見つめる。
「坊様の占いだとチャイ、明後日は、大雪になるって話すよ。アンナキャンプへは、明日じゅうに到着した方が、良いっすよ、ゴパルの旦那」
坊様というのは、ここではチベット仏教の僧侶の事である。
そう言ったばかりのサンディプであったが、ゴパルの中年太り体型を見て、思い直したようだ。
「俺やニッキの足なら、余裕でアンナキャンプまで行けるがナ。ゴパルの旦那の足ではチャイ、明日中の到着は厳しいんじゃないか?」
ニッキも同意して、太くて短い眉をひそめた。
「慣れれば、一日で着きますけどね。初めて歩くならチャイ、今日じゅうに、もう少し先まで登っておいた方が安心すよ」




