ギャルゲーという他人事~六時限めっ~かていか
「まぁまぁまぁ、皆さん、他に気になることはありませんか?」
ウラメンのその問いに、少女たちは首をかしげる。
これ以上に致命的な問題点があるだろうか。
ウラメンはチョークをとり、
しりつ じょさいがくえん
とひらがなで書いた。
「この世界は『私立女祭学園』ですが、
…多くの方々に…私服ダサい学園、といわれています」
「なんだって!」
「そんな、嘘ですわ!」
「そんなぁ」
「嘘だよね?にぃ!」
「…」
「なんだ…と、だぜ!」
「説明するより早いので皆さん、着替えてきてください」
口もとに手をあてながら、少女たちはぞろぞろと教室から出ていき、数分でぞろぞろと戻ってくる。
ウラメンの指示で一人ずつ前に出てくるりとまわってみせる。
「やはり、異世界の服装に近いものを選んでしまうな」
葵は真っ赤な軍服のような上着に大量の缶バッジをぶらさげている。勲章のつもりだろうか。下には真っ青のミニスカートに膝上の茶色のロングブーツをあわせている。
「どうみても、コスプレです。TPOって知っていますか?
あと配色がクリスマスツリーじみています。
常識人ぶっていますけど、ダサい通り越してヤバイです」
「おーっほっほ、庶民にはわからないセンスかもしれませんわね」
シルクの金色のロングドレスに身をつつんだ嬢子は、濡れたように赤いピンヒールをこつんと鳴らした。耳や首、腕に指、いたるところに輝く宝石が蛍光灯の下でも眩しい。
「いや、今からどこにいく気ですか?胸元めちゃくちゃ開いていて、スリットもすごいことになっていますけど、そういうお店の嬢にしかみえません。
あと、金持ちっていうより趣味が悪い成金ファッションです」
「か、かわいいと、思っていたんですけど」
あおいは、白いワンピースに薄い桃色のカーディガンを羽織っている。街を歩いていてもおかしくない、唯一の人物である。
が、しかし
「なんで頭に花冠つけているんですか?
あと、手に持っているレジかごはなんですか?
家庭的のアピール間違っていますよ。本当に没個性ですね」
「…」
アオイは頭の先から足元まで黒一色である。無地の黒のタートルネック、黒のロングパンツ、黒のショートブーツ。だが、その姿を異常にしているのは、間違いなく身体中にまかれている銀色のベルトである。
「…その、なんで、体中ベルトまいているんですか?隙間ほとんどないくらい巻いちゃっているせいで、間接曲がらないですよね?ロボットみたいな動きになっていますよ。正直に言って怖いです」
「妹子にメロメロ?」
姉とは対照的に妹子はカラフルで水玉模様に溢れた服装であった。ピンクに緑に黄、三段に重ねられたパニエからのぞくのはオレンジ色のかぼちゃパンツ。水色のニーソックスは水玉もようが所狭しと埋め尽くしている。
「ミュージックビデオでも録る気ですか?
それに自分の脳みそよりも大きなキャンディをなぜ頭に張り付けているですか?」
「アタシはギャル風だぜ!」
マキャラメはやたらとギラギラとしていた。スパンコールが鱗のように並べられたTシャツに、黒々と輝くショートパンツ。顔には星形のサングラス、アクセサリーには全て髑髏があしらわれており、何かの儀式じみている。加えて髪の毛がバベルの塔よろしく天を突いていた。
「よく知らないものを想像だけで描くとこうなるんだろうなって思います。
いいたいことはたくさんありますが、とりあえずデートに白猫ちゃんサンダルで来ないでください」
ウラメンは額をおさえて、首を横に振る。
「ダサいとか、そういう次元じゃなくてひどすぎます。あなたたちのいい所なんて見目くらいしかないのにっ!」
地団駄まで踏みながら、ウラメンは少女たちをなじり続けた。