ギャルゲーという他人事~三時限めっ~しすてむ
「えーと、それじゃぁ」
再び教壇に立つウラメンに嬢子がぴしっと指を突きつけた。
「お待ちなさい、わたくし、言いたいことがありましてよ」
ウラメンの返事を待たず、嬢子は立ち上がりウラメンを押し退けて教壇に立つ。
「この世界は、【場所】に出ているわたくしたちの【アイコン】を選択して【イベント】を起こしていくものですわ」
いいながら、嬢子はすらすらと黒板に学校のイラストとキャラクターアイコンを描きこんでいく。
「その【イベントフラグ】に不備がありますわ!」
屋上に自分のアイコンを描き、嬢子はウラメンを壇上から見下した。
「わたくしの三番目の【イベント】、屋上でひとり昼食をとっているところに【主人公】がやってくる【イベント】ですけど…この【フラグ】は『平日』『晴れ』『屋上』のはずですのに、雨でも発生してしまうんですの」
「【マップ】表示は雨なのに、【スチル】だけが晴れになってしまうと…いやぁ、それはおかしいね」
「そこではないですわ!!」
ばんっと、嬢子が黒板を叩く。
「いいですこと!わたくしはこの【イベント】待機状態になってしまったら、雨でも!台風でも!真夏でも!極寒でも!屋上でぼっち飯!こんな辱しめないですわっ!!」
雨に濡れたおにぎりの味をあなたは知っていまして?!と、嬢子らハンカチを噛む。
「うむ、そういったことはこの世界でまま起きているな。私も『平日』『放課後』『生徒会室』の【条件】なのに、休日でも待機しているな」
「室内待機組はお黙りなさい!」
「でも、アタシよりはマシだと思うぜ」
マキャラメが、椅子を傾けながら笑った。
「アタシの出会いは【イベント条件】一切ないから、【主人公】が来てくれないかぎり一年間ずっと、プールだぜ。学校に来ても授業さえ受けられないんだぜ」
平日も、休日も、朝から晩まで、天候さえ関係なく、水着でプールの第三コーナーにて飛び込みの姿勢のまま待機だぜ。
からからとマキャラメは笑うがその笑顔に皆はうすら寒いものを感じる。
「そ、そうですね。元旦のイベント時ですらプールにいるマキャラメさんの年中無休待機状態をみて、一部の【ユーザー】から『プールのマキャラメさん』と揶揄されています」
ウラメンは手にかかえた紙を見ながら言う。
「うん、だからさ」
マキャラメは視線を下に落とす。髪がかかって表情がわからない。
「【フラグ】管理、しっかりしろ…だぜ!」
キャラを忘れたのか這いずるような低い声をだすが、最後はまたいつもの調子に戻してマキャラメは笑顔をみせた。
「あ、あの、マキャラメ…さん?あの、わたくし、あなたのこと、そんなことになっていたなんて…」
「気にしなくていいんだぜ!…もぅなれてきたし」
それ以降誰もなにも言えない重い空気のなか、ウラメンが目頭をおさえながら、言いにくそうに口を開く。
「…その、ですね、…僕は、【システム面】は畑違いのウラメン…で…も、もちろん、意見としてあげてはおくけど、……あまり、期待はしないで欲しい…なぁ…」
そのままあさっての方向に目をやるウラメンをみて、少女たちは目を丸くした。
「えっ、じゃあ、にぃは何しにきたの」