2話 クマのお悩み相談会
大聖堂で神父として働き始めてから一ヶ月がたった。毎日忙しいけれど、そこそこ充実している。俺が神父になってから、祈りや懺悔、相談等に来る人が増えたらしい。モテるスキルのおかげかな?
DPどうて――努力ポイントはいまだに使う機会が訪れていないが。まぁ貯めるだけ今のうちに貯めとくのもいいだろう。
おっ。いろいろ考えているうちに人が来はじめたな。そろそろ仕事をはじめるか。
「アナタハ神ヲシンジマスカ??」
「はい。信じます。」
「よろしい。悩みを打ち明けなさい。」
なんか、ここだけ聞くと新手のヤバい宗教みたいだが、この世界ではこれが普通らしい。何でも、神様はタダで助けてはくれないらしい。なんて器の小さい神様だろう。
「私の旦那酒癖悪くて、暴力を振るうの。離婚して新しい出会いが欲しいわ。」
「僕はね、精神科医兼心理学者を仕事にしているのだけれど、女の子と付き合ったことが無くて気持ちが分からないんだ。」
「僕は勇者。旅に出るために王様からお金を貰いに行ったのだけれど銅貨10枚しかもらえなかったんだ。これじゃあ薬草しか買えなくて武器を買えないんだ。」
「俺は王国兵だ。平民だから雑用しかやらせてもらえず、格は最下位。どうにかならないものだろうか。」
「私はね、商人だ。実は、妻が離婚したいって言っているんだ。自分もね、離婚は別にいいんだが、世間体や慰謝料がかかるから、それが嫌なんだ。」
離婚したい女性、イケメン精神科医兼心理学者、貧乏勇者、平民王国兵、世間体を気にする小太り商人の5人か。さてどうしたものか。 この教会では午前中に話を聞き午後に神の教えを答えるという仕組みになっている。
「神父様。どうすればよろしいですか?」
「あなたの所持金を全て入れて財布ごと置いておきなさい。そして酒場に行くといいでしょう。良い出会いがあるはずです。そして彼にまかせなさい。」
次はイケメン精神科医兼心理学者か。イケメン高学歴だから俺にとっては敵だけど、ここは神父として願いを聞こう。
「酒場に行きなさい。そこに一人の女性がいる。その女性はお金を持っていないだろうから、おごってあげなさい。そして夜東のはずれの宿に二人で過ごしなさい。」
「ありがとうございます。」
そういいイケメンは走って出ていった。
「神父様。やっぱり武器がなきゃ戦えませんでした。買った薬草も使って、もうお金がありません。」
貧乏勇者か。俺も異世界に来るなら勇者になりたかったなぁ。DOUTEIQUESTってRPGで勇者はタンスとかから普通に盗んでたよなー。タンスとか開けて女モノの下着あったらどうすんだろ。 ババアのだったら最悪だな。おっと、話を戻そう。
「町の中央のでかい商人の家にお財布あるからとっておきな。」
「それって、犯罪じゃ、、、。」
「大丈夫だよ。ドウクエでは勇者普通にタンスとか漁ってたし。」
「ドオクエとは?よく分かりませんが分かりました。神父様がそうおっしゃるなら。」
「お金持って北の洞窟行くといいよ。」
よく分かりませんが分かりました。ってどっちだよって思ったけど、まぁ何とかなるだろう。
「私はどうすればよろしいでしょうか。」
「町の中央広場の噴水を警備していなさい。すると、小太りの男から家に泥棒が入って財布が盗まれた。というから、その財布の特徴を聞いて、北の洞窟に行くといい。」
最後に小太りの商人か。
「家に帰ると奥さんの財布が盗まれている。だから、家の近くにいる兵士に声をかけるんだ。その後、酒場に奥さんいるから尾行するといいよ。あと、盗まれたお金は元々奥さんのものだ。そのお金を使って勇者が捕まっているから出してあげなさい。」
ふう。仕事が終わった。終わった。今日も多くの人を救ったなぁ。良いことをした後は気分がいいねぇ。
―――後日―――
俺は大聖堂のおばあさんの孫シャルと街に買い物を楽しんでいた。
シャルちゃんは小さくて可愛いなぁ。
「シャルは今日も可愛いね☆」
「神父様も可愛いですよー!!あそこには、私と、神父様しかいないから、将来は、け、結婚するってことですよね??」
シャルたん顔を赤らめて上目づかいされると、やられちゃいます。はい。
「シャルとけっ―――」
「神父様―!!」
こんするさ☆キラン。と言う前に話をさえぎる不届きものはだれだ? 声の方を向くと二人の男女が立っていた。
「神父様のおかげで、僕たちお付き合いすることになりました。」
「私も元旦那と離婚することができました。」
「「ありがとうございます。では」」
そういうと、彼らはお辞儀をして去っていった。
ほうほう、それは良かった。 そう言えば、王国兵の人も窃盗犯逮捕!!勲章授与とか新聞に載っていたな。 あの商人結構町では有名な人らしいな。
「神父様、勇者のパレードですよ!かっこいいですね」
「うむ。勇者も無事で何よりだ。」
「勇者様、魔法使い、戦士、商人!?なんか一人だけ変なパーティメンバーいますけど?」
おぉ。あの商人勇者一向に入れたのか。よかった。よかった。
商人は妻と男が宿に入る浮気の証拠を見つけ、離婚する際に自分が慰謝料を払わなくてもよいようにした。そして勇者を釈放し、勇者の仲間入りしたのだ。
頭を使えば神なんか使わなくてもね。
「神父様、なにニヤニヤしてるんですか?さ、買い物の続きしましょ。」
そう言われ、シャルと、シロクマの神父は人混みの中へ消えていった。




