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第8話 新しい家と新たな家族(妹?)


店員が引っ込むと商会の会長が出てきて、馬車による移動となった。


正直な話し、ファンタジー系の馬車は乗り心地が悪いとよく言われている。

まさしくその通りだ。

道が悪けれ揺れも激しくなりお尻が痛くなるだろう。

この世界の住人は痔にならないのか?


最悪の環境に揺られ目的の場所に着いて見たものが、侵入者を拒む為の大きな壁に大きな門である。

家に壁が必要なのか、と思ったが貴族なら当たり前なのだろう。


そして会長から渡された鉄で出来たカード。

これで門の鍵やドアを開けるらしい。

門のボタンを押すと、距離制限や時間制限があるもののこのカードで会話も出来るという。

無駄にハイテクである。


門を開けると手入れのされていない木々が立ち並び、遠目に大きな屋敷がある。

屋敷内の掃除はしてあるそうだが、庭の手入れまではしてないとのこと。

まぁ、その辺りはどうにかする。


案内され地下室を見るが予想より広い。

小学校の体育館より少し小さいぐらいだ。


庭は草が伸び放題だが広さに問題ない。

むしろ広すぎである。


「如何でしょうか?」


会長にそう聞かれるが予想以上で言葉に困る。


「いや、予想以上だった。凄いとしかいえないな」


俺の言葉に満足したのか、グイグイ勧めてくる。


「そうでしょとも。防犯の類もしております故。庭も手入れをすれば見違えるでしょう」


雑草は魔法の練習で燃やしたり斬ったりする予定なので人はいらない。

掃除は…何とかなるだろう。

最悪、雇うか奴隷を買えばいい。


結論は特に問題ないので買うことにした。

契約書にサインを交わし、控えを受け取る。


「難しい、こと、終わった?」


シエルには何が何だかわからなかっただろうな。


「終わったよ。もうフードを下ろしても大丈夫だ」


シエルの可愛い顔が現れる。

自然と抱きついて頭を撫でるのが習慣化してしまった。


「ん…♪」


シエル本人は喜んで受け入れるのも習慣化した原因でもあるのだろう。


「さて、生活する最低限の部屋を掃除して街を見に行くぞー」


「ん!」


部屋はキッチンと寝室、私室を掃除すればいいか。

まぁ寝るのはインスタントハウスの中でなんだがな。


魔法で風を起こして埃や塵を外に出し雑巾で拭く。

それだけだ。

いや、定期的に掃除はされて外装も内装も傷んだ所はなく綺麗なのでそれぐらいしかない。


ん?なんで魔法が使えるかって?

エルフの里で暇だったときにイメージで何となくやったら何かできたんだ。

何でかはわからんから聞くな。


掃除が思ったより早く済んだな。

懐中時計を見るが15時前である。

やることはやったので街を見に行くか。


「シエルー。街を見に行くぞー」


「ん。どこ、いく?」


「商業区だな。日常品から食材とか買う場所を把握しないとな」


我が家から徒歩30分で街に着く。

家と街の間は畑になっているので田舎にいるような感覚だ。

畑の匂いは好きだからいいけど。


人に聞きながら商会や八百屋、服屋などの場所を覚える。


後はやることがないので出店のアクセサリーや屋台を冷やかし、そろそろ帰ろうかと思い、歩いてると何故か自然と路地に目がいった。

薄暗く見えずらいが、子供が座り込んでいた。


「おにぃ?」


無意識に立ち止まってしまったようだ。

シエルは俺の視線を辿り子供を見つける。


「助け、る?」


「あぁ」


何故が放っておけない。

近づくとある特徴に気が付いた。

初めてシエルに会ったときのように、全体的に汚れ、髪は伸び放題でぐしゃぐしゃになっており、体は痩せこけ、ボロ布を纏っている。

ストリートチルドレンというなら普通なのだろう。

だが、それ以上の特徴がある。


「……忌み、子」


シエルの言う通り、汚れていてもわかる白い髪と肌。

目は見えないが、恐らくシエルと同じアルビノだろう。


「大丈夫か?」


声をかけてみるが反応がない。

胸が動いてるので生きてはいるだろう。

顔や布の隙間から見える肌は痣だらけだ。


「声が聞こえるか?」


軽く触れると僅かにだが反応した。

それ以降は何度も声をかける無反応だ。

反応する気力がない程に衰弱しているか、絶望しているか……いや、どっちもだろう。

とにかく見るに堪えないのでポーションを飲ませることにする。

中級で充分だろう。

自分で飲んでくれたらいいのだが、反応がないから口移しか。


「……っ」


口移しをすると抵抗があった。

手を突き出し離そうとするが力が弱く叶わない。

なかなか飲み込まないので鼻を摘む。

これでようやく飲み込んだ。


「ケホッ…ケホッ……な、なに…ケホッ……」


お、ようやく話す気になったか。


「やっと話したな。ちなみに、飲ませたのはポーションだ。体の痣はもうないだろ?」


そういうが、確認しようとはせずにこちらを赤い目で睨みつけてくる。

やっぱりアルビノだったか。

だが、すぐに諦めたような目になり俯く。


「おーい?」


何度か話しかけるとようやく返事があった。


「もう…放っておいてよ……」


うーむ、こういう状況に対面したことないからどうしたらいいかわからんぞ。


「悪いがそんなことはするつもりないからな」


無反応だ。

手強いぞお……


「1人なんだろ?宛もないんだろ?一緒に来ないか?」


もうズバッと言ってしまえ。

ゴリ押しじゃ。


「……私が何か……わかってるの?」


お、今度は1回で返事があった。


「忌み子だろ?それがなんだ?」


キッと睨みつけてくる。

最初より眼力が強いぞ。


「シエル、おいで」


シエルを呼び、フードを取ると子供は驚いた顔をする。

……エルフってとこか、同じアルビノってとこか迷うな。

同じってとこに驚いてるよな?


「ほれ、お前さんと同じだろ?で、だからなんだ?」


畳み掛けるなら今か。


「一緒に来い。信じろとも安心しろとも言わない。だが、俺がいる限り守ってやる。だから来い。ちなみに、拒否権はないぞ」


手を伸ばして語りかける。

子供は視線で手と顔を行き来させる。


「…なんで?」


「ん?理由か?」


頷く。

ふむ、理由ね。


「 綺麗なのと汚いのと崇高なのどれから聞きたい?」


なんでポカンとしてんだ。


「…綺麗なの」


「単純に助けたいと思ったからだ。可哀想だとか哀れみがあるとか否定はしない。まぁ、俺には助けることが出来る力があるからな」


「…汚いの」


「シエルのように育てれば美人になるかなーとか思ってたりするが、俺には家族がいないからな。寂しいってやつだ」


「…崇高なのは?」


「即断即決即実行!とりあえず思ったままに行動Yeah!」


「おにぃ。実は、考えなし?」


「おう。考えるの面倒だ」


シエルから突っ込みを頂いた。

珍しいな。

子供がフフッと笑った。

俺とシエルの漫才がウケたのか。


「いい笑顔じゃないか。さて、理由は話したぞ。何度でも言う。一緒に来い。もっと笑わせてやる」


「一言、増え、た」


「ツッコムところか?」


「なんと、なく」


シエルが俺のマネをしよった。

何か嬉しいぞ。


それはさておき、もう一度手を伸ばす。

子供も手を伸ばしてくる。

目は不安を宿して、手は迷ってるかのように何度も止まる。


「…ぁっ」


焦れったいので無理矢理掴んで引き寄せて抱き締める。


「よし、捕まえた。もう離さんぞ」


抱きしめつつ頭を優しく撫でる。


「ん、よろし、くね」


そう言ってシエルも抱きついてくる。


「…ぅん」


泣いているようだ。

嬉し泣きならどんどんしなさい。

泣き終わるまでシエルと抱きしめてあげた。


「さて、そろそろ名前を教えてくれるかな?」


鑑定使えばわかるんだろうが、あんまり使いたくない。

何となくだがな。


「シール」


「シールか。俺はスグル・アイウチだ。改めてよろしくな」


「ん、シエル。よろし、く」


「ぅん!」


俺の新しい家族が加わった瞬間だ。

さて、この後の予定は無いとはいえだいぶ時間を使ったな。

早く帰るか。

シールを風呂に入れて、ご飯を食べさせなければ。


シールに予備のマントを着せておんぶする。

今の状態じゃ歩くのは無理だろうからな。

もちろん、シエルと手を繋ぐのも忘れない。


む、そう言えばシールは女の子なのか?

顔つきは女の子だとは思うんだが。

いいや、本人に聞いてしまえ。


「シールは女の子であってるよな?」


「ぅん」


ビンゴである。

もし男の子だったら危なかった。

男の娘なんてジャンルに目覚めたらやばい。

何て冗談はさておき、シエルにシールを風呂に入れてもらうつもりだからな。

子供とはいえ男と女で風呂はダメだろ。

しかも年頃だし。


「それと、さっきは悪かった」


「?何が?」


「ポーションを飲ませる為に口移ししただろ。無理矢理ですまん」


ファーストキスならノーカンにしてほしいものだ。


「…大丈夫」


顔を背中に押付けて、小さな声で許された。


実は、ポーションを飲ませる為に舌を入れるか鼻を摘むか迷ったのだ。

男の娘という可能性があったから鼻を摘んだのだ。


まぁ、俺は変な方向には走ってないはずだ。

まだノーマルだ。

下は8歳から上は34歳までオッケー。

うん、問題ない。

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