表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

勇者アインは日本に行く

苦しかった戦いを終わらせる

悪の権化を、人類の敵を倒す時が来た!


身の丈は人の二倍はあり、頭には二本の角

その背には黒き漆黒の翼が六枚


漆黒の魔王エルアドラ


手に持つのは輝く聖剣


最後の一太刀は魔王を切り裂く



「これで終わりだあああ!!」


「グガァアアアアアッ!!!!」


耳をつんざくほどの声は

大陸全土へ響き渡る魔王エルアドラの断末魔

かつて大陸・・・いや、世界を苦しめた魔王の最後だ


そして俺はー勇者アインは異世界からきた冒険者3人と共に魔王を打倒する


これで世界は平和になるー


だから、もう…戦わなくて…


その瞬間アインの視界は真っ白に包まれた


(勇者・魔王システムー魔王の討伐を確認ー)


「なんだ?」


(報酬を支払うー・・・・・)


その言葉が聞こえた瞬間、俺はー意識を失った




寒さに震えて瞼を開く


「あ・・ああ・・」


目を覚ますとそこは公園だった

吐いた吐息は僅かに白い

冬が近づいている証拠だ


すっかり日は暮れ夜になっている

公園の銀灯がぼんやりと明るく寝転がっていたベンチを、俺を照らしていて


公園?


薄暗く、広い公園には俺以外は誰も居ない


外側の交差点には幾つもの車が走っている


車?

自動車か


「あ、いかなきゃ・・・」


俺はどこかにいかないといけないということを思い出す・・


どこかに行くのを思い出す?


「ちょ・・とまてよ・・俺はアイン・・?」


そう、先ほどまで魔王と戦っていた筈だ

打ち倒した感触は未だこの手にある

白昼夢?

そんなわけはない。

この手には確かにあの最後の一撃の感触がまだ…


まだまだボケる様な年ではないし、何よりもあんなファンタジーな夢を見るようなほどにゲームもラノベも…


ラノベってなんだ?


「どういうことなんだ・・・」


あたりを見回して、自身の服装を見て

うん、パーカーにジーンズだ。

靴はナイキーのスニーカーだし

ただ、着た記憶はないな


ジーンズの後ろポケットに手を伸ばすとそこには真新しいスマホが入っていたし、反対側には二つ折り財布が入っている

どちらにも見覚えはあるが?


軽く混乱し始めた所で、頭に響く声が全てを解決する


(申し訳ありません。間違えました)



は?何の声だ?

つうか間違えた!?何を間違えたんだ!!


(勇者アインよ、貴方の願いは勇者でない人生が送れる世界へ行きたいでしたね?)


そ、そうだ・・やはり俺は勇者アインだ

そう、そんなことを冒険の最中願うようになっていた


(こちらの手違いで、日本に帰りたいと願った冒険者が行った異世界が本来は貴方が行くはずの世界で・・・)


もしかして・・俺が来たのは・・ここが日本という国か!?いや、確かに頭の中にはその情報はある・・・けど何で知ってる?


(はい、生活を支障なくする為一通りの知識と住処の条件は揃えました。一部の記憶への刷り込みもスムーズにいっているはずです)


刷り込み!?

洗脳に近いぞこれ!!違和感がほとんど無いし、むしろこの声や勇者アインの記憶が間違っている気すらするぞ!?


でもそうか・・ある意味願いは叶っているのか・・・?


(それでは、よい人生を)


ああ・・まぁいいか・・・


「ちょっとまて!もう少し何か説明しろよ!俺は元の世界に帰れるのか!?それか本来の異世界に行けないのかよ!」


(無理です)


「無理って・・・マジかよ」


(マジです。・・・プッ)


「おいテメェ!いま笑ったろ!?なあ!?おい!」


(いいえ、笑っていません。今日より貴方は、「相坂アイン」として頑張って下さいね。苗字のないアインでは不便と思いこちらで適当に名前付けておきました、あと生活費は毎月口座に振込みますが足りなければ今まで通り働いて稼いで下さいね、当面必要なお金は財布に入れておきました。それでは勇者アイン・・いえ、相坂さん頑張って!・・プツリ)


まくし立てるように喋った天の声・・女神はまるで電話を切るような音を立てて消えた

その後はいかに問いかけても声は帰って来なかった


諦めるしかない・・


「とりあえず帰るか・・」



自宅は・・・分かる

この今居る公園の横にある古びたアパートの201が俺の部屋だ


確か他には入居者もいない・・


妙に記憶が凄いな・・作り込みが凄いと言うか


公園の出口に向かいながらポケットの財布を取り出す

中を見てみると、諭吉が1人と硬貨が3000円程あるな

これで当面凌げるか。

生活費は毎月振り込まれるって言ってたしなぁ

つか振込みってどうやる気だよ


だが部屋に戻ると事態はより深刻だった


「あんのクソ女神!!」


部屋には何も無かった

正確には

8畳ひと間の畳部屋、台所はあるし、トイレと風呂はあった。

エアコンは備え付けであるが、冷蔵庫やレンジ、洗濯機はない。

もちろん布団もない

換えの服は、今着ている物と同じものが10着はおいてあるのに下着がない

靴下もない


食べ物は缶詰めがダンボールで山積みになっている。

全てみかんの缶詰めだ


アンバランス過ぎるだろ!?

みかん食って生きろってか!?


ん?ちょっとまて、1万で足りないもの全てが揃うのか!?


俺は戦慄する


勇者として旅立つ日に、王から貰ったのは金貨500枚だった


剣や鎧を揃えたらぴったり500枚無くなっていたのを思い出す


確かあの日は野宿したんだっけ


翌日から必死に魔物を倒し、素材を売って金を作りなんとか宿屋に泊まったが儲けは少なく馬小屋生活をしばらくしたのを思い出した


アレよりはマシかと思えたがココは日本だ

魔物は居ないぞ

どうしよう・・・


そんな事を考えていると

頭の中の記憶にバイトと言うものが思い浮かぶ


「働くしかないな」


まあ、日本ならば至極当然だ。そもそも労働は義務であるし


「くそっ確かに知識は十分じゃんか!」


とりあえず明日から必要な物を買い集めつつ、仕事を探そう



まてよ、確かアイテムボックスに金貨やこの日本でも売れそうな物があるはずだ

エリクサーや万能薬なんかはきっと凄い価値に違いない!

俺天才じゃね?



「アイテムボックス!」


何時ものキーワードだ

これで開くはずなのに、何も開かない


あれ?おかしいな


「アイテムボックス!!」


やはり開かない


ん?そう言えばステータスはどうなってるんだ?


「ステータス!」


あれ?・・・


見えないな

いつもなら目の前に自分のレベルやらスキルやらが書かれたのが見えるはずなのに見えない


涙が滲む


見えなくて普通だろ?

ここは日本だからな・・・

見えたら…人間じゃねえよな


そんな納得をしている自分はいるが


「納得出来ねぇ」


苦労して集めた価値あるアイテムが無くなってるし

ステータスも分からない

この調子ならおそらく魔法やスキルも使えまい


「クソ女神・・・」



俺はあの声の主を、恨む事しか出来なかった




今日はとりあえず服に埋もれて寝ようか・・


寒さは部屋の中にも入り込んでいる

すきま風は容赦なく音をたてている


何も・・無いよりもマシか・・



俺は翌朝、エアコンを付ければ良かったんだと気づいた






日本生活初日は


あの冒険初日よりも寒かった



はじめましてちょせです


ご覧頂きありがとうございます


さあ、書き直しだ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ