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アリスの恋

二人目の主人公ポジ登場であります。

 私の名前は大恋寺アリス。

 私は今日、恋をした。生まれて初めて恋だ。

 そして、今から告白をする。思い立ったら即行動!これが私の座右の銘なの。

 私は今、どこかに行こうとする好きになった人のところに向かって走っていく。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


*数時間前*

 モモは薄暗い、壁に囲まれた目の前に扉のある部屋で目を覚ました。器用に立ったままである。


「・・・ここは?何かしら、この扉は。」


 モモはなんとか視認できるドアノブを掴み、引いた。

ガタッ!

 ・・・押す方だった。モモは顔を真っ赤にして両手で顔を隠して悶絶した。自分以外に人がいなかったのが救いだろう。

 数分悶えたあと、気を取り直してドアノブを押した。すると、目の前にあったのはドア。その場所は明るかったのでモモは今の自分の姿を確認しました。


 モモは元の世界で転生するまでに着ていた男物の和服と袴を身を包んでいました。しかも、胸大きいので溢れんばかりの状態になっています。腰には帯剣しており、愛用の刀が鞘に入っています。


 意識を向ける対象を変え、ドアを開けました。またドア。開けます。ドア、開ける。からのドアでまた開ける。さらにドアがあり、開ける。そしてドア。


「・・・」


 モモは額に青筋を浮かべ、ゆっくりとドアを手で触り、


「ザ・キビタンゴ!!」


 すると、どうだろう。ドアが白くなり、グニャリと曲がったではありませんか。もはや、ドアの役目を果たしていません。


 張本人はというと、これまたさっきより顔を赤くして顔を隠しながら、「くあぁぁ。やっぱり魔法名、恥ずかしすぎるぅ!!」とか、呟いてます。美女が赤面して悶えてるわけですから萌えますよね。中身がクズしゃなければですが。


 キビタンゴは忘れずにいくらか千切って持っていきました。その辺は抜かりが無いモモです。

 とまあ、ドアを開ける作業をあと20回ほど繰り返すと少し広い空間に着きました。


 そこは、木で出来た部屋で外から活気ある人の声などが聞こえてきます。随分とドアばかりのところは遮音性が高いようですね。そして部屋の端にはデブでブサイクなむさ苦しい男がカウンターの向こうでイスに座ってます。


 うわぁ・・・。何?この生物、人間?とりあえず無視しましょうか。とか、考えて外に出るためらしきドアに手をかけました。


「ちょっと待て、お姉さん!外に行くのは、説明を聞いてからにしてくれ!」


 と、男がモモを引き止めました。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「あんた、転生者だろ?名前はなんて言うんだい?」

「私はモモといいます。あなたは?」

「俺の名はダーウィン。しかし、あんた綺麗だねぇ。どうだい?今夜、俺と酒飲まねぇか?んで、そのあとも・・・なんつってな!ハッハッハッハッ!!」


 しょっぱなからオヤジの下ネタ全開のブタ野郎でございます。よし、こいつは実験台にしよう。と、モモは思いました。


「まず、言うことは・・・おほん!ここは始まりの町だ。全ての転生者が集う場所だ!君はこの広大なD-Worldで自由に暮らしてくれたまえ!一国の王となるもよし。のんびり畑仕事をするもよし!暗殺者となって国の軍隊に追われるもよし!全てが自由だ!!」


 ぺラペラと手元のマニュアルを見ながら叫ぶブタ。舐めてんの?モモはキレかけました。セリフくらい覚えときなさいよこのブタ。

 そんな、モモの心の声には気付かずにダーウィンことブタ野郎は続けます。


「俺はこの世界に来た転生者達の案内をする仕事をしている。この世界にはスライムのような弱いモンスターから、ドラゴンなどの強い生物。さらに、俺達のような人間やエルフなんてのもいる。」


 お前、人間だったのかよ。人外だと思ってたわ。まぁ、実験台にはするけどね。っていうか、エルフとかドラゴンて何だ?


「まず、あんたには1000マニオンが支給される。この世界の貨幣だ。この金を元手に自由に生活してくれ。ほらよ!」


 ダーウィンはパンパンに膨らんだ袋をカウンターに乗っけた。中々に重そうだ。



「・・・あぁ。欠けてる説明箇所があった。この町があるのは北の第2大陸。通称“ノージス”だ。この大陸以外にも大陸や小島が存在する。そう言ったことはめんどくさいから自分で調べてくれ。」


 いや、教えなさいよ。真面目に仕事しろよあんた。


「この世界には迷宮(ダンジョン)と言われるものも存在する。そこは危険だが、宝の山なんだ。奥に行けば行くほど危険だが、そのぶん良い物が手に入りやすくなる。大きな町の近辺にあるダンジョンは危険度が低いが、人里離れた危険な場所にあるのは比例して危険度が増す。まぁ、入るか入らないかは個人の自由だがな。」


 入らないわよ。私はイケメンと結婚して幸せに暮らすだけなんだから。と、言いかけたモモであった。


「と、こんなもんだな。では外に出ていいぜ。」


 ダーウィンが外への移動をうながした時、その腹の中の虫が鳴いた。


「あぁー。くっそ!マイケルの野郎、早く飯食って戻って来いってんだ。」

 多分、マイケルとは交代のための人物だろう。そして、そのセリフを聞いたモモは好機とばかりに口を開いた。心の中で口元をゆがめながら。


「あら、お腹が減ってるんですか?では、きび団子でもいかがですか?」


 と、白い元ドアの塊を差し出した。


「お!良いのかい?じゃあ、遠慮なくいただくぜ!」


 そして、ダーウィンはきび団子を食べてしまいました。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 数分後、縦に長い小屋の中から二人の人影がでてきました。一人は男物の和服を着た美女。もう一人はブタのような太った男です。ブタは美女のまわりをその女を守るように歩きまわっています。


「じゃあ、ダーウィンさん、服屋さんの場所を教えて?」


 美女ことモモは猫をかぶって丁寧口調でダーウィンに言いました。


「わかった。こっちだよ。ついてきて。」


 ダーウィンは淡々と答えて美女の案内をしました。

 別に案内事態はおかしいことではないのです。ですがそれは、普通の町民や転生者の場合であり、“転生者の案内人”たる彼が個人を案内するなどありえないことなのです。

 転生者の案内人は合格率00.1%の中から選ばれたエリートなので、人数が少ないため仕事も多く、時間の余裕が無いのです。どんな人から選ばれたのはまた今度。


「ふ~ん。いろんな物が売ってるのねぇ。」


 ダーウィンはもくもくと歩き続けます。モモはキョロキョロとまわりの商店を見たりしながら歩いているので、はぐれそうなのですがモモが立ち止まるとダーウィンも後ろを見ていないのに立ち止まります。

いろいろ見つつ歩くと、周りの人からの視線がかなり集まっています。たぶん恰好のせいだとは思いますが。


 ふと、14か15歳くらいに見える女の子と目が合いました。金色の髪な髪に水色と白のフリフリのついたワンピースを着た可愛らしい女の子でした。子供が苦手なモモもこの子の可愛さには心にキュンときました。モモはその子にはにかんで片手を軽く振りました。


「こんにちは。あなた、可愛いわね。」


 珍しくモモが心からの賛辞を送りました。本当に珍しい光景なのです。レアです。レアショットです。


「あ、あう、うぅぅぅぅぅ。」


 女の子は顔を真っ赤にしてしゃがみこみました。モモはどうすればいいのかわからず、


「ご、ごめんね。別に泣かせたりしたかったわけじゃないのよ。」


 と、あわてておりました。


「だ、大丈夫です・・・。別にお姉さんが悪いわけじゃ・・・。」


 それを聞いたモモはほっと肩をなでおろして、


「そう、じゃあ私は用があるから行くわね。ごめんなさいね。」

「あ・・・」


 女の子は残念そうな声を漏らしましたが既に歩きだしているモモには聞こえませんでした。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


*そして現在*

「待ってください!」

「え?」


 モモは引き留めてくる先ほどの女の子を見た。


「あの、えっと。その・・・」

「どうしたの?どこか怪我とかでもしちゃった?」


 モモは自分がやっぱり何かしてしまったのだろうかと考えた。しかし、次に女の子が言った言葉によって彼女は思考が停止した。


「私をお嫁さんにしてください!お姉さま!!」


 大恋寺アリス。もとい百合少女は大声で叫び、周りの町民や転生者。想い人の女性を氷つかせた。

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